アニメの世界観を劇伴で見事に表現!「『MUTEKING THE Dancing HERO』オリジナルサウンドトラック」作曲家・島崎貴光、増田武史 インタビュー

By, 2021年12月1日



タツノコプロの名作アニメ『とんでも戦士ムテキング』が2021年にリブート作品として復活! 現在好評放送中のテレビアニメ『MUTEKING THE Dancing HERO』の劇伴を43曲収録した、CD2枚組のサウンドトラックが2021年12月1日(水)に発売される。
矢野顕子が作詞・作曲をした「空のうた」や、伝説のアニソンの新バージョン「ローラーヒーロー・ムテキング -Version.2021-」を収録。
さらに竹内まりやの「Plastic Love」、山下達郎の「土曜日の恋人」、和田アキ子の「星空の孤独」など、名曲を劇伴用にアレンジしたインストゥルメンタル音源ほか、聴きどころ満載となっている。
今回は劇伴を手掛けた島崎貴光、増田武史両氏に制作にまつわる話をうかがった。

―今回のお話はどのような経緯で持ち上がったのでしょう?

島崎貴光さん(以下、島崎):お世話になっている方から「今度、40年前に放送していた『ムテキング』をリブートさせたアニメを作るのですが、ご一緒しませんか?」とご依頼いただいたのが最初です。

―新型コロナウイルスの影響で放送が1年間延期になってしまったそうですね。

島崎:はい。昨年の秋放送予定だったので、当然すべての音楽は完成していました。しかし、延期になったことで監督のほうから追加発注がありまして。そのとき「さらに作るのは大変だ」というよりは「ちゃんとオンエアに向けて動いているんだ」という安心感のほうが勝りました。また、増えた時間を使ってブラッシュアップしようと考えている現場のみなさんに対して、より一層敬意を持ちました。

増田武史さん(以下、増田):僕は先方とのやりとりを、基本的に島崎さんにお任せするスタンスでしたので、曲づくりに専念させてもらってました(笑)
なので島崎さんは本当に大変だったと思いますよ。

島崎:長年の現場経験を『MUTEKING THE Dancing HERO』の音楽制作でも、フルに活かすことができました。

―島崎さんが増田さんにお声がけをした経緯は?

島崎:まず、監督のなかに竹内まりやさんの「Plastic Love」がイメージとしてありました。
2008年に公演が行なわれたミュージカル『本気でオンリーユー』は(竹内)まりやさんのヒットソングばかりで構成されていたのですが、そのとき音源制作を担当されていたのが増田さんだったんですね。なので、監督からまりやさんの話が出たとき「これは増田さんにお願いするしかない!」と思い、最初の打ち合わせ後すぐに電話をしました。

増田:島崎さんには、いままでもA.B.C-Zや少年隊の曲などのアレンジをご依頼いただいたことがありますし、今回も「ぜひ」ということでふたつ返事でお請けしました。

島崎:いろいろな案件でご一緒してきたので、今回も安心してお任せすることができました。本当に心強い存在です!

―増田さんは、アニメの劇伴を手がけるのは初めてとのことですが、不安はありました?

増田:島崎さんとは前々からの仲ですし、不安よりも「なんとかなるだろう」という思いのほうが勝っていました(笑)
とはいえ、まりやさんと(山下)達郎さんは、事務所の大先輩ですから、当然緊張しますよね。でも1周回って、リスペクトする気持ちがそれを上回って、とても楽しく制作させていただくことができました!

―楽曲はどのように作られていったのでしょう?

島崎:『MUTEKING THE Dancing HERO』は音楽がベースとなり、ストーリーに直結していくアニメなので、僕も初期段階から参加させていただき、一緒に細かくイメージの共有と音楽の方向性を練り上げる作業を繰り返しました。

―ちなみにおふたりは少年時代、どんなアニメ・特撮作品をご覧になっていました?

島崎:『太陽戦隊サンバルカン』や『宇宙刑事ギャバン』など、特撮作品が大好きで、家の近くでショーをやると聞いたら親に「行きたい~!」とねだるような子どもでした(笑)

増田:僕は、渡辺宙明さんが楽曲を手がけた作品でいうと『マジンガーZ』『グレートマジンガー』などの作品を観て育った世代なんです。だから、今作でも戦闘シーンになると、そのころの画が頭に沸き起こってくるんです。

島崎:『とんでも戦士ムテキング』はその後放送されましたからね。増田さんは僕よりも宙明さん楽曲に造詣が深いですよ。

増田:いやいや、長く生きているだけなので(笑)

―『とんでも戦士ムテキング』の楽曲も参考にされたのでしょうか?

島崎:参考にしようと思ったのですが、今作はリメイクではなくリブートで新作なので、積極的に聴くことはしませんでした。制作スタッフからも「新しい音楽を作ることで過去作へのリスペクトを表現したい」とおっしゃっていただいたので、脚本や監督のイメージに沿うものを自分らしく提案しようと思いました。

増田:僕はリアルタイムで観ていましたが、なかなかにぶっ飛んでいますよね(笑)

島崎:40年前にこういうアプローチをしていたことが、圧巻です(笑)

―『MUTEKING THE Dancing HERO』について、ご覧になった感想をお聞かせください。

島崎:『とんでも戦士ムテキング』に負けず劣らず、唯一無二の作風で、キャラクターも物語も濃いですよね。

増田:島崎さんがおっしゃったように、ストーリーはかなりオリジナリティ溢れる内容になっていますが(笑)、僕としてはとにかく初めての劇伴なので、自分の曲が流れていることへの感動が一番大きかったです。手がけた曲がアニメの随所で流れること自体、不思議な感覚になります。

―サントラ曲のタイトルはすんなり決まったのでしょうか?

島崎:実は、丸2日くらいかかりました。毎回劇伴のタイトルを考えるときは、曲数も多いので非常に悩みます。初日にダーッと考えて、翌日ちゃんとフィットしているかどうかを改めて考えながら清書していきました。前の日には「これは面白く作れた」と思っても、一晩経つと「ちょっとふざけすぎたかな……」と思ったり。

―アレンジで意識したところは?

島崎:シティポップと呼ばれるジャンルや80’s(80年代に流行したファッションやスタイル)を意識し、レトロ感を意識しました。

増田:「Plastic Love」の曲調に軸を置きました……と言うか、ずっと聴き続けて来たジャンルなので、僕の場合、あまり意識せずとも、自然とその方向に向かって行くようです(笑)

―ボーカル曲を作る際の、とっておきのエピソードはありますか?

島崎:「ローラーヒーロー・ムテキング -Version.2021-」に関しては、原盤をお借りして作ったんです。アナログテープの音源だったのですが、こういった昔の音源を分析する機会ってなかなかないんですよね。テープに刻まれた音を聴けたのは本当に貴重な経験になりましたし、とても刺激的でした。40年前の音源に現在の音を足すという作業は、なんだか不思議でしたね。

―「Super Hyper MUTEKI Buddy」に関してはいかがですか?

島崎:「ローラーヒーロー・ムテキング -Version.2021-」だけでは敵に勝てない、ということで(真白健太朗さん演じる)ムテキと(江口拓也さん演じる)DJが作った新曲です。
SANABAGUN.(サナバガン)さんというジャズ/ヒップホップグループと一緒に制作したのですが、文句なくカッコイイ方々で、彼らのライブ感ある演奏や熱量をそのままパッケージできたかなと思います。結果的にムテキとDJがまるでバトルをしているような、バチバチで勢いのあるナンバーに仕上がりました。

―レコーディングのエピソードを教えてください。

島崎:真白君がまったく緊張しなかったのが印象的でした。彼にとっては初めてのレコーディングだったのですが、それを感じさせず、持っているものを出し切ってくれました。ムテキは一見頼りないですが、芯がちゃんとあって考えも持っているので、彼に同調しているような感覚になりましたね。

―「空のうた」も、作中でキーになりそうな楽曲ですね。

島崎:本作でヒロイン的立ち位置の(高橋李依さん演じる)アイダさんは、アイドル志望の女の子なんです。作曲の矢野顕子さんは、松田聖子さんに曲提供をされているということで「アイドルっぽい、キラキラした曲を」とお願いさせていただきました。

増田:この曲に関しても、島崎さんが準備をしてくださったので、僕は乗っかっていくだけでした。でもやっぱり、矢野さんの楽曲をアレンジするというのは半端ないプレッシャーでしたね(笑)

島崎:僕も最初にデモの矢野さんの歌声とピアノを聴いたときは、職務放棄したくなるぐらい(笑)感激しました。素晴らしくて毎日何度も聴いていました。レコーディングでは、高橋さんがアイダさんに徹して歌ってくれたのがうれしかったです。

―お気に入りのトラックは?

島崎:増田さんが手がけられた曲だと、Disc1の「ステキングのテーマ」とDisc2の「ヴィヴィのテーマ」です。個性的なキャラクターのテーマ曲を作らせたら右に出るものはいないんじゃないか、と思うくらいに気に入っています!最初にデモが届いたときから大好きな曲です。

増田:恐縮です……。

島崎:僕が作った曲だと、Disc1のファンキーなナンバー「Wonderful Boogie」、そして両Discに入っている「星空の孤独」です。「星空の孤独」の「-Player Piano Roll Mix-」は「ロール式自動演奏ピアノ」を意識して作りました。アニメで流れるVersionでは、わざと無機質で淡白に聴こえるようにするのがすごく難しかったですが、サントラ収録の2Versionでは、ドラマーのスガタノリユキさんにまったく異なる演奏をしていただき、人間味を出しています。

増田:島崎さんが手がけたナンバーでは、まずはDisc1の「428スクエア」とDisc2の「セオの世界」です。どちらも作中で存在感を放っていますし、ぜひ耳だけでも堪能していただきたい曲です。そしてDisc2の「静寂ノスタルジー」と「星空の孤独 -Nostalgic Mix-」もお気に入りです。

島崎:推していただいてありがとうございます!

増田:それから矢野さん、達郎さん、まりやさんの曲はもちろんですが、自分の曲だとDisc1の「ベイサイド・ダイナー」、「Happy Lucky Days」、「ストップモーション」です。
3曲並びで収録されているのですが、本作で僕が勝手にテーマにしている「シティポップ」にマッチしていると思いますし、僕がシティポップが好きなことを再認識したナンバーです。

島崎:その話を聞いてびっくりしました。3曲を並べたのは増田さんからお願いされたのではなく、僕が「すわりがいいから」と思ったからでして。増田さんとシンクロしているのを感じられてよかったです!

―ムテキングがフィーチャーされたジャケットも目を引きますね。

島崎:ミラーボールがギラギラで、レトロポップ感も色濃く出ていますし、インテリアとしてお部屋に飾っていただいてもうれしいです。

増田:インテリアとしてなら、アナログ版も欲しいところですね(笑)

島崎:確かに! オシャレなジャケットはそれだけでも価値がありますからね。

―最後にメッセージをお願いします。

増田:『MUTEKING THE Dancing HERO』は一言では表せないような世界観になっていまして、劇伴にも様々な顔があります。島崎さんと僕、それぞれのクリエイターの楽曲の特徴や良さを感じていただきたいです。

島崎:物語がちょうどクライマックスに向かうタイミングでのリリースですし、サントラとともに盛り上がっていただきたいです。よろしくお願いします!

<インタビュアー/ダンディ佐伯・カメラマン/清水裕貴・文責(編集)『れポたま!』編集部>

【CD概要】

「MUTEKING THE Dancing HERO オリジナルサウンドトラック」
発売日・配信開始日:2021年12月1日(水)

価格:3,300円(税込)

(2枚組/全43曲)

発売元:スマイルカンパニー 
販売元:スペースシャワーネットワーク

■収録楽曲
<Disc-1>

01.Dancing Train 02.428スクエア 03.Plastic Love -Scat Chorus Mix- 04.Wonderful Boogie 05. ベイサイド・ダイナー 06.Happy Lucky Days 07.ストップモーション 08.マット&トミー 09.LIBERTY STREET 10.マジカルディスコ 11.C’mon MUSiC 12.セオ登場のテーマ 13.不協和音 14.ミステリアス・パラドックス 15.THE LOST 16.空のうた -Humming Mix- 17.星空の孤独 -Player Piano Roll Mix- 18.オクティンクBLACK 19.ステキングのテーマ 20. ジョージ・スカイハイ 21.Precious Memories

<Disc-2>
01.Chill Vibes 02.セオの世界 03.CHAOS THE BLACK 04.ピンチはチャンス 05.危機一髪 06.ムテキのハート 07.形勢逆転 08.ムテキンチェンジ!! 09.ローラーヒーロー・ムテキング -Version.2021- <CDのみ収録> 10.Super Hyper MUTEKI Buddy 11.MUTEKING REVOLUTION 12.静寂ノスタルジー 13.ヴィヴィのテーマ 14.空のうた 15.I’m back 16.Funky Groovin’ 17.コミカルハプニング 18.Plastic Love -Guitar Chorus Mix- 19.土曜日の恋人 -Guitar Chorus Mix- 20.星空の孤独 -Nostalgic Mix- 21.LOVE SPACE -Guitar Chorus Mix- 22.空のうた-Guitar Chorus Mix

●配信URL
https://ssm.lnk.to/MTDH_OS

<作曲家 プロフィール>
島崎 貴光 Takamitsu Shimazaki
SMAP、A.B.C-Z、AKB48、NMB48など数多くのアーティストへの楽曲提供・プロデュースを手掛け、アニメ・ゲーム・ドラマ・舞台・CMなどの音楽プロデュース、ディレクター、原盤制作を行う。第 48 回日本レコード大賞「金賞」ダブル受賞、SKE48「青空片想い」がクラウンレコードシングルヒット賞を受賞。
近年では、ドラマ「悪魔の弁護人 御子柴礼司」やアニメ「ハクション大魔王 2020」の劇伴・音楽プロデュース、ゲーム「イケメン戦国」のメインテーマのプロデュースを担当。
ほかに、「アイドルマスターSideM」「カードファイト!! ヴァンガード」「少女☆歌劇レヴュースタァライト」「トミカ絆合体 アースグランナー」「ゾイドワイルド ZERO」など、多くのアニメ作品を手掛けている。

増田 武史 Takeshi Masuda
ギタリストとしてデビュー後、アーティストのライブサポートを経て作編曲家に専念。松田聖子、近藤真彦、郷ひろみの楽曲、竹内まりやのソングミュージカル『本気でオンリーユー』の楽曲制作を手掛けるなど、アーティストからの信頼も厚い。
ほかに、SMAP、NEWS、AKB48、東京女子流、神谷浩史、小野大輔、岡本信彦、緒方恵美、早見沙織や、アニメ作品「ハヤテのごとく!」「絶対可憐チルドレン」「黒子のバスケ」「ラブライブ」など、幅広く楽曲提供・編曲を行う。また、自身の歌声にも定評があり、ギターに加え、ボーカル・コーラスでの参加作品も多数。

●MUTEKING THE Dancing HERO予告

●TVアニメ『MUTEKING THE Dancing HERO』/「Super Hyper MUTEKI Buddy」ムテキ(CV:真白 健太朗) + DJ(CV:江口 拓也)

■アニメ公式HP
https://muteking.jp
■アニメ公式Twitter
https://twitter.com/MUTEKING2021
■アニメ公式YouTube
https://www.youtube.com/channel/UCO1v04r_ObYNV2oGQlkNqug

(C)タツノコプロ・MUTEKING製作委員会