初のエッセイについて、悠木 碧がとことん語る! 「『悠木碧のつくりかた』発売記念トークショー」著者インタビュー

By, 2023年12月24日



悠木 碧、初のエッセイ本『悠木碧のつくりかた』が2023年9月21日に発売され、それを記念したトークショーが11月5日(日)、都内で開催された。当日は本書の編纂を行なった編集者の小田巻さん(中央公論新社)が司会のもと、トークが進行。裏話もたくさん飛び出し、集まったファンをよろこばせた。
イベント終了後、本書について悠木さんに話をうかがった。

―『悠木碧のつくりかた』というタイトルはどのように決まったのでしょう?

悠木 碧さん(以下、悠木):実は最初、編集担当の小田巻さんからは別の案をいただいていたんです。でも「『悠木碧のつくりかた』がカワイイと思うんです!」とごり押ししました (笑)

―タイトルはいつ決まったのですか?

悠木:全編書き終えてからです。結果として悠木 碧がどうやって作られてきたのかが綴られた一冊になりまして。直感にも従ってつけたタイトルになります。

―ほかの制作物に関しても、後付けでタイトルを決めたりすることが多いのでしょうか?

悠木:そうかもしれません。とくに今回は「あれも、これも書いておいたほうがいいかも」と思いつくままに進めていったので、出来上がったものに対する素直な所感を反映したタイトルになりました。

―本書を書き終えて、改めて見えたものはありますか?

悠木:本が完成したときは「ようやく完成した~!」という安心感が強かったですが、改めて本書の内容を見返したら思っている以上に人間のことが大好きなんだというのがわかりました。自分のことをいつも観察していますが、他人のことも同じくらいよく観ているんだな、と。

―本書の制作には約1年かかったそうですが、楽しかったですか? それとも大変でしたか?

悠木:難しいですね……。書く内容に迷うことはほとんどなかったのですが、執筆作業に向き合えるメンタルの日と向き合えない日とありまして。でも締め切りは絶対に守ろうと思っていたので、常に何かに追いかけられる夢は見ていました(笑)

―執筆するうえで、周りに相談したりはしましたか?

悠木:父と対照的に(笑)、母がいろんなことをすごくよく覚憶えているんです。彼女が教えてくれたことをきっかけに、書けそうなエピソードを思い出すことはありましたね。

―本書は「お仕事篇」と「推しごと篇」の2部構成になっていますが、レイアウトはどのように決まったのでしょう?

悠木:普段している仕事の話と、「推し」や趣味など、プライベートな話に大きくわかれているということで、小田巻さんのほうから提案していただきました。
私の仕事とプライベート、どちらに興味がある人でも楽しんでいただけるような構成になってます!

―「お仕事篇」と「推しごと篇」では筆の進み方がだいぶ違ったそうですね。

悠木:自分のことを振り返るときは、楽しいこと以外も思い出してしまうんです。逆に、好きなことを自由に語れる「推しごと篇」では、基本ポジティブなことしか考えないので(笑)、自然と筆が進みました!
「お仕事篇」を書き尽くしたうえでご褒美感覚で「推しごと篇」に臨んだ感じです。

―悠木さんは、普段から「大変なことは先にやっておく」タイプなのでしょうか?

悠木:タイミングにもよりますね。「いまはより思考が必要な作業ができそうなタイミングだから、先にやっちゃおう」みたいな。
例えば私の場合、絵を描くときは「ラフを描く作業」ではあまり筆が進まないんです。逆に「着彩(絵画や工芸に色を施すこと)」作業は気分が乗るので、先にラフをたくさん作っておいて、気持ちがあまり乗らないときに「着彩」するようにすると、無限に描いていられるんです(笑)

―アニメのアフレコでも場面やキャラクターによって、演じ方を変えることはありますか?

悠木:はい。私が猫猫(マオマオ)役で出演している『薬屋のひとりごと』という作品はセリフが多く、「ここのセリフを立てて、ここは逆に引いて……」みたいな作業に頭を使うので、先に台本をもらって準備しないとキツイです。でも、その場のノリでリズムに乗れるシーンもあり、そこはあまり考えずに演じることができるんです。ある種の「メリハリ」のようなものを感じることはありますね。

―ファンや同業者のなかには「悠木 碧7人いる説」を唱えている人もいるそうですね(笑)
時間の使い方がお上手だということなのでしょうか?

悠木:いろんなことにトライし、継続できるのは、親を含む周りの人たちの協力合ってのことだと思っています。特に両親は、子役時代から二人三脚でずっとささえてくれています。両親なくしていまの私はなかったと思います。たとえ別の道を歩んでいたとしても、それは変わらなかったんじゃないかと。

―本書ではオーディションに落ちた話など、赤裸々に書かれていますね。

悠木:今回の話をいただいた際「これから声優を目指す人にもたくさん読まれるかもしれない」ということを言われまして。ならば、声優の仕事はうまくいかないことも多いのに、いいことばかり書いていてもどうかと思ったんです。読者の方がいざ声優になったとき、何も知らずに現実を見るのは残酷なことだと思いますし。
「声優が好きだからなりたい」という人がほとんどの業界でそれはまずいな、と。「私はこうして乗り越える術を見つけたけど、君に合うかはわからないよ」と提示することは、筆者としての責任なのかな、と思いました。
しんどくて苦しいこともたくさんあるけど、それをどう逃がしていくのか? 私の場合は「それを糧にして」というのは無理なので(笑)
こういうことを言ってくださる先輩に囲まれてここまできたので、このことはちゃんと伝えておこうと思いました。

―主に「声優を目指している人たち」に届けたい本になったということでしょうか?

悠木:声優を目指している人だけでなく、声優・アニメファンの方にも「イベントやアフレコ、取材以外にもこんなことをやっているよ」というのがわかると、私たちのことを身近に感じてもらえるかな、という想いも込めて書きました。
どうやら子育てをしている方にも読んでいただけているみたいで、「うちの子がちょうど人生の岐路に立っていて……」という人には、母が私をどう育てたのかというエピソードが刺ささるのかもしれません。
「こういう人に読んでほしい」というより、「読んだ人がどのように感じてくれるのか?」のほうが重要だと思っています。読んだ感想を誰かに伝えなくてもいいので、自己分析のきっかけになればいいな、と。

―執筆を終えて、ご自身のなかで何か変わったことはありますか?

悠木:まず「本を1冊書けるんだ!」という自信がつきました。執筆中は「このままで書けるのかな?」、書き終わった後は「書けちゃったよ」、そして世に出たあとにお褒めの言葉をいただいたときは「得意なこと1個増えたかも!」と、気持ちの変化はありましたね。
エッセイというジャンルは、上手なのか下手なのかよくわからないですが「楽しく読めました」というお声をたくさんいただき、自信をつけることができました。

―本書では「ファッション」の項目も好評だったそうですが、ファッションと言えば、悠木さんは以前から「仕事で和服を着てみたい」とおっしゃっているそうですね。

悠木:本当は着たいのですが、いかんせんアフレコ中にノイズが乗ってしまいまして……(苦笑)
アフレコ現場での着用は断念しました。
そう言えば、日舞(日本舞踊)をやっている友人がいて、洋服と和服を組み合わせてうまく着こなしているんです。彼女からいろいろと教わってはいるものの、私服での和と洋の融合は難しいので、「和」をイメージしたキャラクターを演じたときのイベントや舞台あいさつ、また授賞式のようなかしこまった場で着用できればいいな、と思っています。

―今後エッセイを書くとしたら、書いてみたいことはありますか?

悠木:最近は衣装を自分でセレクトすることも多くなってきたので、「服のなかにキャラクターのモチーフをこうやって取り入れているよ」というのを紹介できたら、ファンの方にもマネしてもらいやすいのかな……と、何となく考えています。
それと、私の言動や活動に関して深く考察してくださるファンの方がたくさんいるので、そのような方々に対し、「答え」をお伝えできる場があれば、と思っています。

―本書では仲のいい声優・寿 美菜子さんと早見沙織さんと鼎談されましたが、ほかに鼎談、もしくは対談してみたい相手はいますか?

悠木:ここまで母について書いたからには、母との対談はマストかもしれません(笑)
あとは、大変恐れ多いですが、機会をいただけるのでしたら沢城みゆきさんとぜひお話させていただきたいですね。
でもやっぱり美菜子(寿さん)とみさお(早見さん)とが、一番本音で話せるかもしれません。仕事とプライベート、両方を共有している絶妙な関係だと思いますし、親には通じないような冗談も言えますので(笑)

―「推しごと」の項目で語られていましたが、『機動戦士ガンダム00[ダブルオー](『00』)』の推しキャラクター、ロックオン・ストラトス役の三木眞一郎さんはいかがですか?

悠木:実は以前、飲み会で三木さんに思いのたけを聞いてもらったことがあるんです。ありがたいお言葉をいただいて泣いてしまったのですが…、推しキャラクターの声優さんに話を聞いてもらえるなんて、本当に幸せ者ですよね。
私も『機動戦士ガンダム 水星の魔女』でノレア・デュノク役としてガンダムに乗ることができたのですが、彼女が作品で何かを残せたと思うと、『00』でもらったものをガンダムシリーズで返すことができたのかな、と。「ガンダムに乗らせてもらってありがとう」という気持ちになりました。
作品を観た人たちが、その気持ちを継いで「人の心に何かを残そう」と思ってもらえたら、こんなに素敵なことはないですね。

<インタビュアー/ダンディ佐伯・文責(編集)『れポたま!』編集部>
写真(C)米田育広

【書籍概要】

「悠木碧のつくりかた」
発売中(9月21日発売)

1,870円(税込)

ページ数:224ページ

【本書の目次】

・はじめに
〈お仕事篇〉
生い立ちとか家族とか/子役だった頃/声優になるぞ/学生と大人の狭間で/大学と仕事の両立/先輩・後輩・同輩/今の私のおはなし/「好き」を仕事にすること/悠木碧式ルーティン

〈推しごと篇〉
オフの日だってある/私とオタクと推しと/ケモノの目覚め/神様が性癖/推しが“いた”/メイクにまつわるエトセトラ/ファッションは武装/前世って信じる?/猫、我が主。

・おわりに
・特別鼎談:寿美菜子×早見沙織×悠木碧

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