若手アニメーター育成プロジェクト『アニメミライ』で制作された今年度の4作品が2013年3月2日(土)、全国劇場でいよいよ公開! その初日舞台挨拶が東京・新宿バルト9で行われた。
当日は株式会社ゴンゾの『龍-RYO-』より千明孝一監督、株式会社マッドハウス『デスビリヤード』より立川 譲監督、バーテンダー役の前野智昭さん、株式会社トリガーの『リトルウィッチアカデミア』より吉成 曜監督、アッコ役の潘 めぐみさんが登壇。ファンの前で見どころを語った。
千明監督:若手に普段やらないことをたくさんやってもらおうと、時間が許す限りコンテに入れ込みました。各々の個性が出ていると思いますので、そこを楽しんで下さい。
立川監督:育成にあたり、まず「空間デザインを難しくする」というテーマを掲げまして、そのレイアウトをとるだけでも全体の3分の1ほどを費やしました。
ミステリアスな内容になっていますので、そこは役者さんの演技を有効に使わせていただいております。
前野さん:アフレコの最中は、多くの関係者の方が見守ってくださっていたので、緊張感はいつものアフレコ以上に感じました。
自分の中の引き出しをあさって、ミステリアスさを可能な限り出そうと頑張りました。
吉成監督:最初は11,000枚ほどの予定だった作画枚数が、17,000枚まで伸びてしまいました(苦笑)。
若手クリエイターたちの苦労が染み込んだ作品になったと思いますので、是非楽しんでください。
潘さん:私にとっては大先輩の方がたくさんいらっしゃって、とてもすごい現場でした。
絵も出来上がっていて、キャラクターの口にあわせて声をあてられたので、とてもアフレコしやすかったです。是非シリーズ化して欲しいと思いました。
舞台挨拶の後、登壇者にコメントをいただいたので紹介しよう。
―バーテンダー役を演じられての感想をお願いします。
前野さん:マッドハウスさんの作品は個人的にも昔からよく拝見していましたし、気合が入りました。
「バーテンダー役」と聞いて、最初はメインの役どころではないと思いましたが、ほぼ主役に近いキャラクターということで、嬉しくもありましたし、同時に責任も感じました。
―作品の見どころを教えて下さい。
前野さん:人間の心理の深い部分を描いた作品で、男役の中村悠一さんや老人役の筈見 純さん、そして女役の瀬戸麻沙美さんがが上手く演じられていますし、観終わった後に視聴者が色々と想像できる
内容になっていますので、色々な楽しみ方ができる作品になっていると思います。
―結末については監督さんに応えはお聞きになったのですか?
前野さん:実は聞いてないんですよ。ですから自分の中でも、あの後どうなってしまったのか、非常に気になっています。
―「アニメミライ」という企画について、どう思われますか?
前野さん:業界に身を置く人間として素晴らしいプロジェクトだと思いますし、役者として参加できたのは、本当に声優冥利に尽きます。
こうした事業はこれからも続けていって欲しいと思いますし、僕も何らかの形で携われれば、と思っております。
―アッコ役を演じられての感想をお願いします。
潘さん:アッコが自分に近い部分が多かったので役にすんなり入っていけました。天真爛漫で王道を行くような主人公であり、素直になれないお年頃なはずなのに、それを外にさらけだせる強さを持つ少女です。今回のお話で自分を信じる力を得たことにより、彼女の魅力がさらに引き出された気がします。
―舞台挨拶でも、藩さんの口からシリーズ化、続編希望のお話が上がっていましたが。
潘さん:絶対にお願いしたいですね! 舞台挨拶ではそのことばかり言ってしまって、作品の魅力が伝えきれなかったような気がします……。こういうところがアッコに似ているかも知れません(笑)。
―作品の見どころを教えて下さい。
潘さん:キャラクターが個性的で、メインのキャラクター以外のところでも動いたりしているんですね。それと背景もとても手の込んだものになっていますので、何度も観返して欲しいです。アニメではあるのですが、そこに人がいるように描かれていて、キャラクターの温度が感じられる作品になっているのではないかと思います。
また、印象にのこったセリフがあって、(日髙のり子さん演じる)シャイニィシャリオの「信じる心があなたの魔法よ」というものがあるのですが「これは誰にでもできる魔法だな」、と思いました。
―「アニメミライ」という企画について、どう思われますか?
潘さん:身振り手振り以外で、言葉でどのようにアニメーターの真髄を次の世代に伝えていくのか?というのが大切なんだな、ということが分かりました。
また「アニメミライ」の作品に関われるよう、日々修行をしていきたいと思います!
【千明孝一監督、立川 譲監督、吉成 曜監督】
―舞台挨拶を終えられての感想をお願いします。
千明監督:舞台挨拶はいつも緊張するのですが、今回も観に来てくださった方の前なので、余計に緊張しましたね。
立川監督:できれば上映後に行った方が、僕の手がけた作品的には良かったかも知れないですね(笑)。
吉成監督:あまり専門的な話にならないように注意しながらお話したつもりです(笑)。
―今回の制作にあたり、苦労された点を教えて下さい。
千明監督:とにかく2Dでやってみよう、ということで、背動(※はいどう)のような、昔の作品によく使われていた手法を使ってみたりしましたが、あまり上手くいかなくて……。苦労しつつも何とか完成まで持ってくることができました。
立川監督:緊張感の必要な作品でしたので、レイアウトの部分に神経を使いながら全体的に統一していこう、ということにしました。若手に「望遠ならこう、円形ならこう」とレンズの説明をしていく過程が苦労しましたね。
吉成監督:「アニメーターを遊ばせてあげる」という気持ちで、あまり規制をかけず、厳しくならないように意識しました。その中で自由になり過ぎないよう、いかに手綱を絞っていくのか、その加減が難しかったです。
―本作の見どころを教えて下さい。
千明監督:今後テレビシリーズなどにつながればいいな、と思いましたが、まずは「若手育成」という「アニメミライ」という企画意図に沿って制作しました。
立川監督:心理戦をベースにした作品ですが、元々のテーマが「死の、その先の生を描く」というものでして、そこは絶対にブレないようにしよう、と思いました。
吉成監督:「ここを観ていただきたい」、というのではなく「とにかく観ていただきたい」、というのが本音です。
しいて言えば、キャラクターの動きでしょうか。近年のアニメではあまりしないような動き方をさせていますので、そこに注目していただきたいです。
―「アニメミライ」という企画について、どう思われますか?
千明監督:今回実際に制作してみて、自分の中で実になるようなこともたくさんありましたし、このまま続いていけばいいな、と思っています。
その中で、ジャニカ(一般社団法人・日本アニメーター演出協会)、文部科学省の皆さんが苦労されて企画している、本件の「若手アニメーターを育てる」という企画意図を外すわけにはいかないと思っております。その部分に関しては最大限気をつけないといけないですね。
立川監督:若手育成という意味では、もう少し先まで様子を見ないとどのくらい成果があったのかが分からないですが、今後、現場で「アニメミライ」から巣立っていった若手の子と出会い、どのような成長をしていったのかを見届けるのが我々の義務なのではないかと思っています。
吉成監督:作品の出来が良くても「どこまでが新人の力なのか?」というのがありまして。やはり成果が見えづらい、というのがありますので、そこが今後の課題なのかな、というのはあります。
千明監督:そうですね。立川監督がおっしゃったように、今後も「アニメミライ」に携わったアニメーターを追っていく、というのが大事だと思います。ジャニカさんは数年後に今回携わったアニメーターにインタビューをとる、というお話を聞いていますが。
立川監督:インタビューもいいですが、上がりをみせてもらわないと(笑)。成果物を見れば、どれくらい成長したかが一目瞭然ですからね。
「アニメミライ」は2013年3月2日(土)より全国公開中。公開劇場などの情報は公式サイトをチェックしてほしい。
<Text・Photo/ダンディ佐伯>
●アニメミライ 公式サイト
http://animemirai.jp/
●公式ツイッター
https://twitter.com/AM_Pub