小説からゲーム原作・ディレクター、声優と幅広い分野で活動するマルチクリエイター、瀬名快伸さんと、「天空の城ラピュタ」や「もののけ姫」、「時をかける少女」などで美術監督を務めた山本二三さんがタッグを組んだ絵本アプリ「歩き屋フリルとチョコレートきしだん」。このiPhone・iPad用絵本アプリの配信開始を記念して2月17日にイベントが開催された。
当日は瀬名さんによる朗読会、そして山本さんと瀬名さんによる対談が行われ、お二人からはここでしか聞けない制作エピソードも多々明かされた。最後はサイン会も行われ、終始和やかなイベントとなった。
●『生フリル』も登場!物語世界へと誘う朗読会スタート
イベントは瀬名さんによる朗読会からスタート。スクリーンに映し出された作品を鑑賞しながら瀬名さんが朗読、さらにステージにはフリルを演じる女性が登場する。物語に合わせて動くフリルの姿に臨場感もぐっと増し、会場に集まったファンをあっという間に物語の世界へと引き込んだ。
続いて行われた対談では、山本さん、瀬名さんのお二人がステージに登場する。初っ端からジョークを交えての挨拶を観客へと向けたお二人、その様子はすでにリラックスムード。以降も今作についての話を中心に、ここでしか聞けない裏話や笑いを誘うエピソードなど、さまざまな話題でトークは盛り上がりをみせた。
●熱烈アプローチがバレンタインに実る!「歩き屋フリル」トーク
対談前半では、「歩き屋フリルの話題でトークが進む。
まずは作品の制作経緯を語ってくれた瀬名さん。そもそも“歩き屋”というコンセプトは瀬名さん自身が散歩中に浮かんだアイディアとのこと。そしてその世界観を表現するため、山本さんに熱烈なアプローチをしたという。
瀬名さんは「OKのご連絡いただいたときはもう宙に浮かぶかと思いましたね」と当時の心境を思い出し笑顔を零した。ちなみに、この返事をもらったのは偶然にも2月14日。「バレンタインのチョコは一個ももらえなかったところに、OKの電話がかかって来たので、すごいいいプレゼントをもらった!」と忘れられないエピソードとして披露してくれた。
また、お気に入りのシーンについて「フリルが火矢で撃ち落とされるシーン」と語ったのは山本さん。落ちていくフリルのポーズにもこだわりがあり、日本人彫刻家の作品からイメージしたと話してくれた。
山本さん自身、写真家や彫刻家にあこがれを持っている影響だという。さらに話はアニメーションで用いられている技法を取り入れていたり、立体感を出すための技法だったりと、なかなか聞く機会の少ない貴重な話題にもおよぶ。瀬名さんも観客も思わずスクリーンを見入り、感嘆のため息を漏らしていた。
●逃げ出したくなる苦労の連続? 山本作品制作裏話
トーク後半は、山本さんのこれまでの作品に注目。スタジオジブリの作品を始めこれまでに携わった多くの作品の話に話題が移り、瀬名さんも「みなさん見てますよね?何かエピソードがあればぜひ」と山本さんならではの制作裏話を聞きたいと興味津々の様子。すると山本さんは期待を裏切らないエピソードを苦笑いで語ってくれた。
「もののけ姫」ではリテイクの嵐、また「時をかける少女」では大変すぎて誰もなかなか手を付けなかったカットがあったという。それが主人公・真琴が友人の間宮千昭を追いかけ40秒間走り続けるシーン。その間に背景はおよそ200~300メートル分ほど続くというのだ。
スタッフで手分けをして描くも、一番大変な部分はもちろん山本さんが担当したとのことで、「誰かを助けるためならまだいいんですけど、高校生が恋愛を成就させるために走るっていうのは、自分としてはちょっと(笑)。
また、いち経営者として赤字を覚悟しなければなりません」(山本)、「死に物狂いで描いてるのにー、って?」(瀬名)と会場も笑いを堪えられなかった。
現在山本さんは、東日本大震災での津波被害から奇跡的に残った陸前高田市の一本松について書かれた「希望の木」(新井満・作)の制作を進めているという。次の作品はファンタジーから一変、ノンフィクションを描くこととなり、「スタジオジブリで高畑監督と「火垂るの墓」を作りましたが、そういうドキュメンタリー的なものを作ったほうが一番自分の力が出せるなと」とそのきっかけを語ってくれた。
また会場では作品の中心である一本松を描いたカットや、被害にあった町の様子、流れ狂う津波のシーンなどが初公開され、そのリアル感に「これ写真ですか?」と瀬名さんも思わず聞いてしまうほど。衝撃的な出来に会場も見入っていた。
対談終了後には山本さんと瀬名さんが再度ステージに並んでの取材向けのインタビューが行われた。
-イベントの感想をお願いします。
山本二三さん(以下、山本):このようにたくさんの方が来てくださってありがとうございました。初挑戦のような形式で、瀬名さんのシナリオ、お仕事に感謝しております。
瀬名快伸さん(以下、瀬名):世界の巨匠・山本二三先生の絵をバックに朗読ができるということで、実はリハーサルのほうがめちゃめちゃ緊張してまして(笑)。すごく貴重な体験をさせていただいたなと思いました。楽しめました。
-山本先生が特にお気に入りのイラストはどれですか。
山本:ムシーバの部屋に、ムシーバが集めた宝石がいっぱいありますよね?その宝石を描くのにすごく苦労したんです。カリブの海賊の宝石がいっぱいあるシーンを見たり、インターネットで調べたりとか。でも全然いいのがないんですよ。なので、もう自分で勝手に考えたほうがいいなと思って、想像で全部描いたんです。
瀬名:僕が無茶ブリしちゃったんです。カビル・ムシーバは、自分が醜いからきれいなものをどんどん集めちゃうって設定なんです。
-子供のころに好きだった童話や絵本はありますか?
瀬名:僕は「雪の女王」ですね。豹変した男の子が最後には元に戻るところなんか、まさにフリルにも被るところがあり、モチーフとしてとっていたりもします。
山本:宮崎駿さんと一緒ですね。「雪の女王」は影響を受けたって言ってました。
瀬名:本当ですか?!全然知らなかったので。偶然ですね!
山本:私が影響を受けたのは、「わんぱく王子の大蛇退治」という高畑勲さんが助手、森康二さんが作画監督をされてる作品で。後に一緒に仕事ができるとは思わなかったですね。
-本作の見どころ、聞きどころは?
瀬名:人間が成長してく中で葛藤だとかいろいろなものに、出来事に出合ったり愛に触れたりして、自分を成長させていく。その成長物語がフリルのお話の根底に流れているのでその部分をやっぱり見てほしいと思います。
-最後に、ファンの皆様に一言お願いします。
山本:年齢にも関わらず、恥ずかしながらも(かわいらしい女の子を)描きました。フリルのように自分の孫もかわいい子に育ってほしいなと思います。また小さい子供からお母さんまでみんなに楽しんでいただければと思います。本日はありがとうございました。
瀬名:今日はありがとうございました。本日、2月17日からiPhone、iPadで配信がスタートしています。できるならiPadの大画面で見ていただいて、僕のナレーションも入っていますので、よかったらダウンロードしてください。よろしくお願いします。
イベントの最後には再び山本さんと組んでのアニメーション制作を切望した瀬名さん。その実現は多忙な山本さん次第…? 次回作もぜひ期待して待ちたい。
<Text・Photo/瀬賀 ふみ恵>
●歩き屋フリル公式WEBサイト
http://www.cucuri.co.jp/furiru.html
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