2012年4月13日(土)夜、東京・新宿のロフトプラスワンにて、パッケージソフトの売れる売れないを分ける、その微妙なところをギリギリの線で衝いていく前代未聞のトークライブ「店舗版!生アニメガイド01」がおこなわれた。
司会はスターチャイルドレコードの宣伝プロデューサー須藤孝太郎さん。とあるアニメショップで仕入れを担当している会社員・オガワさんをゲストに迎え、某声優アーティストのコンサートで初めて出会ったという濃いふたりの口から生々しい最前線の実態が次々に明かされていった。
相変わらず制作は活発であるものの、ここ数年売上が徐々に下がってきているアニメコンテンツ。いざなみ景気(第14循環)の後退に歩調を合わせている感もあり、アニメ単体で解決できることでもないが、そのような現状で、どうしたらもっとパッケージソフトが売れるのか、あるいはファンが買う気になれるのかを探ろうというのが、今回のイベントの趣旨。
18時30分の開場とともに客席にアンケートが配られ、これに記入された回答も、この日のテーマを考える材料となった。
「現状では1クールにつき、片手で数えられるほどのタイトルしか万を超えるタイトルとならず、その他が数千本単位で肩を並べている」と須藤さんは分析。実際にこの日に回収したアンケートでは、購入を予定している1月期アニメは0~1作と答えたお客様が非常に多かった。
オガワさんは
「昨今、日常やネットなどのコミュニティーで話をするにも、『周りがそのタイトルを知っていないと話題にならない』、『話題となったタイトルを知っていないと話に着いていけない』ということから、昔以上に話題となったタイトルへユーザーが集中しやすい環境となり、それ以外のタイトルとの差が大きいなものになっているのではないか。
パッケージの販売数などが人の目に触れやすくなったことも起因しているように思います。その意味では、話題の作り方がパッケージ販売に影響し始めている」と、購入傾向の変化を説いた。
不況のせいか、可処分所得の多い30~40代が売上の鍵を握っていることも併せて語られた。
アンケートにあった購入の決め手となる理由は「買わないといけない感がある」「作品を応援しているから」「2期が観たい」と、直接作品の内容に関係していないもの。
これについては、地上波デジタルを録画したものを観ても本篇の視聴だけなら十分満足できるレベルにあるため、特典映像が入っているにしろ、高画質のディスクを保有するという動機だけが購入の理由になっていないのではないか、とオガワさんは推測していた。
その点で、メーカーがディスクの内容だけでなく『パッケージの外装など』に凝り、力を入れる傾向は、上記以外のユーザーの需要にマッチしていると考え、その上でお店として行うべき事は、そのパッケージをお客様へしっかりと見せ、魅力を知って頂く事だとオガワさんは言う。
一例として、昨年のパッケージの中で、外側の透明なカバーと内側のスリーブを重ねることで独特な絵柄が出現させる『電波女と青春男』のパッケージは秀逸で素晴らしいと、実物をスクリーンに映して絶賛していた。
アニメのソフトは邦画・洋画などに比べると高価だが、実店舗としては、本来メーカーが設定している値付けを変えたくないと、オガワさんは言う。作品性を変えない範囲で付加価値をつけるには特典に趣向を凝らすことになる。しかし既に特典の種類は飽和状態にあり、ただ特典をつければいいというものでもない。各々の作品性に即してもっともファンに喜ばれる特典を考案する必要がある。
また、キーになる版権イラストの絵柄を早く発表してほしい、というファンの声も多い。ネットで予約をしていたファンも、特典のイラストがよいものだとわかるとキャンセルをして実店舗分にお小遣いを廻す傾向がある。購入計画への影響を考慮すると、版権絵はなるべく早く完成していたほうがよさそうだ。
—————————————————————————————————————————————————————-
第2部は4月期の新作アニメPVを観ながら、客席と登壇者とのあいだで、アニメ全般について熱く語り合った。
また、作品の内容にかぎらず、パッケージソフトについての意見も、積極的に交換した。
たとえば、ブルーレイBOXは高価なので、実店舗でも陳列してあるのはダミーパッケージが多い。通販で買うのと同じ条件になってしまうから店頭で展開して中身がわかるようにしてほしい、という声があった。確認してよければ買いたいというユーザーにとっては切実な問題だ。
最後には「ぼくも働いている身で、かぎられた収入のなかで娯楽を求めている。やっぱりネット通販は安い。6巻、8巻9巻買って特典をもらうのと天秤にかけているんですけれども、全部ウェブで買えばもう1本か2本くらい買えてしまう。パッケージを手に取ったときの喜びがファンとしてはいちばんです。全巻コンプリートしたときに、俺はやったんだと思える付加価値のあるものを店舗さんにはお願いしたい」という意見もあった。
これには須藤さんも、「まさに本日、語ろうとしていたテーマ。手にとったときによかったなと思えるパッケージづくりをしていきたいし、店舗でもそういう施策を企画していきたい」と、あらためて認識していた。
熱心なファンから寄せられた生の声が、アニメ業界を動かすのか。二回目、三回目がさらに楽しみになるイベントだった。
●キングレコード スターチャイルド公式サイト「すたちゃまにあ」
http://www.starchild.co.jp/index2.html