太宰治の名作をもとに制作されたアニメーション映画「HUMAN LOST 人間失格」が11月29日(金)より全国公開! 原作を大胆にアレンジし、SFダークヒーローものに仕上げ、話題となっている。主演の大庭葉藏役・宮野真守、木崎文智監督、脚本を担当した冲方丁が東京・TOHOシネマズ新宿での初日舞台挨拶に登壇し、見どころなどを語った。
―本作では『人間失格』を大胆に解釈されていますが、どのようにキャラクター像を作られましたか?
木崎監督:太宰治の原作からは外れないよう、違和感がないように作っています。
冲方:元々あった人間関係を崩さずに取り入れるようにと、構図を崩さないように念頭に置いて作りました。
木崎監督:ただ、シナリオを作るのは相当な時間を費やしました。かなり難航した記憶があります。キャラクター像を作るのには2年くらいかかりましたかね……。
宮野:それにしても『人間失格』をヒーローものにしようと企画したのはすごいですよね。
冲方:「SFダークヒーローもの」にするためにはどうしたらいいのか? を突き詰めた結果、登場する人間は全部失格にして、特に失格した姿の葉蔵を描こうと思いました。
―宮野さんは、できあがった「葉蔵像」についてどう感じました?
宮野:世界観はガラッと違うのですが、葉藏の精神性や、誰にも説明できない鬱屈した悩みのようなものを考えつつ演じました。偉大な原作があるからこそ、彼の人格の構築をしやすかったです。
―本作はプレスコ(映像よりも先に声優陣が声を吹き込む手法)で収録されました。
木崎監督:音響監督の岩浪美和さんのこだわりもあり、プレスコでは絵コンテ撮したものを見ながら声をあてる、という形を取りました。また、アニメーションディレクターの大竹広志さんが現場に立ち会い、実際の宮野さんの表情を葉蔵に落とし込んでいるので、そこは大きな見どころになると思います。
宮野:どの距離感で生きているのか想像しやすかったので、ぼくの表情が葉蔵に反映して描いてくださるのがうれしくて。どんな細かいところも映像に乗るようにしていただいています。
冲方:宮野さんと葉蔵の声も表情もすべて合致していて、感動しました。
―本作で描かれる『昭和111年』の東京では、19時間労働などの政策でGDP世界1位、年金支給額1億円を実現していますが、この制度が実際にあったら?
宮野:長生きしたいですね(笑)。このシステムがあったら……1日19時間アフレコはさすがにきついです(苦笑)。
―本作には、いたるところにぶっ飛んだ演出がありますが、とくに「ヤバイ」と思ったシーンは?
宮野:アクションのすごさ。タイトルからして一見難しそうに思えるかもしれませんが、実はアクションものです(笑)。
木崎監督:アクションシーンは制作が大変なので、実は「100分中25分くらいしかアクションをやるな」、と言われました(笑)。
冲方:(アニメ制作会社の)ポリゴン・ピクチュアズさんの気合の入れようがすごいです。元々太宰先生の作品は死がつきまとうので、葉蔵がヒーローとして誕生するためには毎回全裸になるんです。
木崎監督:衣装と全裸と、モデリングをするために経費がかさむんですよね。アクションシーンもそうですが、「やるな」と言われたことをどんどんやってしまい、どんどん「失格」していきました(笑)。
―声優陣の芝居についてお聞かせ下さい。
宮野:冒頭の福山潤さん(竹一)の暴走はすごいです。アドリブも入ってましたし(笑)。「櫻井さん(堀木正雄)、絶対悪いやつじゃん」、みたいな(笑)。ちなみにヒロイン・柊美子を(花澤)香菜ちゃんが演じてますが、僕と香菜ちゃんが主人公とヒロインを演じたら、彼女、絶対不幸になるんです(苦笑)。今作はどのような物語が展開するのか、確認してください!
最後に、登壇者からメッセージが贈られた。
宮野:最初に聞いたとき「斬新な企画だな」、と思いました。こういう形でアニメを作ることにより、可能性が広がっているなと思いましたし、海外の人に日本の文化としてこれだけ認められているんだというのを感じました。
僕もお芝居でその文化をたくさん感じ取ってもらえるよう、ありったけを注ぎ込んだのでよろしくお願いします!
冲方:閉塞的なディストピアを書かせていただきましたが、その閉塞そのものを感じていただくというよりも、その閉塞から我々が脱出できるんじゃないかという痛快感や高揚感を感じてください。
木崎監督:古典文学とSFダークヒーローものの融合という前代未聞の話となっています。物語は想像しない方向に転がっていくと思いますので、ぜひご覧下さい。
なお、劇場への来場者プレゼントとして、書き下ろしエピソードのオーディオドラマが聴けるQRコードが入ったポストカードが3週連続プレゼントされる。詳細は公式サイト( https://human-lost.jp/ )をチェックしよう。
<Text・Photo/ダンディ佐伯>
【劇場版概要】
劇場アニメ『HUMAN LOST 人間失格』
絶賛公開中
【スタッフ】
原案:太宰治「人間失格」より
スーパーバイザー:本広克行
監督:木崎文智
ストーリー原案・脚本:冲方丁
キャラクターデザイン:コザキユースケ
コンセプトアート:富安健一郎(INEI)
アニメーション制作:ポリゴン・ピクチュアズ
企画・プロデュース:MAGNET、スロウカーブ
配給:東宝映像事業部
【キャスト】
大庭葉藏:宮野真守
柊美子:花澤香菜
堀木正雄:櫻井孝宏
竹一:福山潤
澁田:松田健一郎
厚木:小山力也
マダム:沢城みゆき
恒子:千菅春香
(c)2019 HUMAN LOST Project
●作品公式サイト
https://human-lost.jp/