【プレゼントあり】新人監督が36分に込めた、“いま一番描きたかった”ものとは? 映画『しらぬひ』片野坂 亮監督 インタビュー

By, 2026年8月18日



『君の名は。』、『すずめの戸締り』などを手掛けてきたアニメーションスタジオ「コミックス・ウェーブ・フィルム」がお届けするオリジナル短編映画が2026年8月21日(金)に公開される。
主に九州の海に見られる、上に多くの灯火がゆらめいて見える蜃気楼の一種「しらぬひ(しらぬい)」をタイトルに冠し、主人公の10歳の少年・湊(みなと)を中心に、リアルとファンタジーが入り混じった世界観をもとに「愛の物語」を見事に描いている。
原作はもちろん脚本も自身で手掛け、さらに作画監督として全カットに携わるなど、デビュー作となる本作に心血を注ぎこんだ片野坂 亮監督に、『しらぬひ』にかける想いをお聞きした。

―まずは映画の制作が決まった経緯を教えてください。

片野坂 亮監督(以下、片野坂監督):「親の事情によって、子どもでいられなくなってしまった子どもたちを描きたい」、という想いを持ったのが始まりで。
いまから約3年前、オリジナル作品を作りたいと思い立った私はコンセプトアートを何十枚も描き上げて、3分程度の映像にしたんです。それをコミックス・ウェーブ・フィルムの川口典孝社長(現・会長)に観ていただきました。

―「しらぬひ」をタイトルにした理由は?

片野坂監督:タイトルは企画発案の時点で、CWFの濱崎周平プロデューサーと一緒に決めました。本作のロケハンで、「不知火(しらぬい)」が発生する土地に伺ったのですが、そこで実際に「不知火(しらぬい)」の近くまで船で向かったことがあるという地元の方にお会いしました。
その方が、「近づこうとしても近づけない。ずっと一定の距離があって、あるところまで進むと、ふっと消えてしまった」と話してくださったんです。
本作は、湊や父親のマサルが、それぞれに“一筋の光”をつかもうとする物語でもあります。でも、人の心もまた、つかもうとすればするほど遠ざかったり、揺らいだり、ふっと見えなくなったりする。
そのお話を聞いたとき、不知火という現象が、この物語で描こうとしているものとどこか重なって見えたんです。それが、この作品を『しらぬひ』と名付けた理由の1つです。

―総尺が36分というショートムービーになった意図は?

片野坂監督:実は制作に3年かかったことにつながっているのですが、川口会長からまずは短編作品で語ってみなさい。と言われたんです。
自分が伝えたいメッセージとエンターテイメントとのバランスを取るため、いかに無駄なく作品を作れるのかを最初の2年間考え抜きました。そしてデッドラインの決まった、残り1年間で完成にこぎつけました。
正直、これだけの時間をいただけるだけでもすごくありがたいことですし、とても感謝しています。

―シナリオの内容はどのように決まっていったのでしょう?

片野坂監督:最初は、いわゆる「三幕構成」のような、物語のオーソドックスな型に沿って考えていました。例えば、男の子と女の子がいたら、「出会って、関係が深まって、離れて、最後にもう一度出会う」というような。でも、そこに当てはめようとしても、どうしてもうまくハマらなかったんです。

本作には、少女の姿をした神様“べんちゃん”という特異な存在がいて、湊の置かれている境遇もある。それらを観客に受け取ってもらうためには、どうしてもある程度の時間が必要でした。普通に描いていたら、それだけで30分くらい使ってしまう。でも、だからといって端折ってしまえば、今度は彼らの感情についていけなくなってしまう。「限られた尺の中で、どうすれば必要なものをきちんと伝えられるのか」。そこは本当に難しくて、2年間ずっと葛藤しながら作っていました。

―相当な生みの苦しみを味わったと。

片野坂監督:はい。そんななかで、「劇場に足を運んでくださるお客さんに、この30分でしか体験できないものを届けること」、そして「自分が命を燃やして、ギリギリまで作り切れる30分の作品にすること」。この二つを、自分の中のルールとして課すことにしました。その結果、「とにかく必要なものだけを描いていこう」というところに行き着いたんです。
そう意識するようになってからは、それまで自分を縛っていたものが少しずつほどけていって、制作のペースも一気に上がりました。
スポーツ選手でいうところの「ゾーン」に入った、という感覚が一番近いかもしれません。

―キャスティングに関しても教えてください。

片野坂監督:まずは湊役・あのさんに関してですが、彼女の仕事に対する真摯な姿勢へのリスペクトがずっとあったんです。また、彼女の歌を聴いていて「声の幅がすごくある方だな」とわかっていたので、湊も演じられると思っていました。
新井プロデューサーからも「作品で表現するべき“痛み”を正しく伝えることができるのが、あのさんだと思うんです」とご提案いただいたので、プロデューサー経由でオファーをしていただき、返事を待つのみというところまできまして。
我々の想いを汲んで引き受けてくださり、ありがたかったですね。

僕は今回、作画も担当したのですが、それってキャラクター1人1人に憑依しながら、直接命を吹き込むということでもあるんですよね。
あのさんもアフレコで大変なところはあったと思うのですが、彼女は湊を“演じた”というより、湊を“生きてくれた”んです。こちらからのディレクションではなく、自主的にやってくれたことが本当にうれしかったです。

―“べんちゃん”役の花澤香菜さんはいかがでしょう?

片野坂監督: “べんちゃん”は、キャラクターというよりも「現象」に近いんですよね。こちらから設定を伝えるのが本当に難しく、「彼女はこうなんです」と説明しすぎると、僕が持つ女性像が反映されて、いびつになってしまうと思ったんです。ですので、言い方が正しいかどうかわかりませんが、最低限のことだけお伝えして、あとはかなり委ねるような形でお願いしました。
そしたら、心の中にカメラを持って、“べんちゃん”を映してくださったと言いますか。こちらが細かく説明しなくても、しっかりと彼女を捉えてくださっていて、本当にありがたかったです。
ただ、ラストシーンだけは「こういう感情で演じてください」と、僕から具体的にお伝えしました。すると、僕が思い描いていたものをそのまま掬い取ったような演技とセリフで返してくださって。本当に感謝しています。

―マサルを演じた三木眞一郎さんも迫真の演技が光りました。

片野坂監督:アフレコ時、三木さんは作品に対してとても真摯に向き合ってくださる方なので、自分も中途半端な気持ちでは向き合えないという緊張感がありました。もちろん、自分自身も全身全霊でこの作品を作ってきたという思いはありましたし、そこに迷いはなかったのですが……。それでも、やっぱり少し緊張しましたね。
三木さんとは、マサルという人物について同じところを見ながら、一緒に作っていけるような感覚がありました。
アフレコ後にお話しする機会があって、その時に「僕は、どうしてもマサルのことを悪者とは思えなかったんです」と言ってくださったんです。それが、すごく嬉しかったですね。
僕自身、人は簡単に「正義」と「悪」に割り切れるものではないと思っています。何か一つボタンを掛け違えてしまえば、誰もがどちらにも転がり得る。その感覚を三木さんもマサルの中に見てくださっていたことが、本当にありがたかったです。

―さる8月9日(日)に地元・福岡で『Peeping Life』シリーズの森りょういち監督とコミックス・ウェーブ・フィルムの角南さんが登壇したトークショーが開催されました。ご感想をいただけますか?

片野坂監督:森さんがいなければ、『しらぬひ』はおろか、コミックス・ウェーブ・フィルムとご縁がつながることもありませんでした。
トークの中で森さんが、「川口会長に誰かを紹介したいとお願いしたのは、後にも先にも片野坂さんの時だけだった」と話してくださって。その言葉を聞いた時は、言葉では言い表せないほどの感謝が込み上げました。
そしてコミックス・ウェーブ・フィルムの角南さんも東京から駆けつけてくださり、僕が四苦八苦していた3年間の裏話や、作品づくりの現場で奮闘するクリエーターたちの姿をお話ししてくださいました。普段はなかなか表に出ることのない制作の裏側まで、来ていただいた皆さんに知っていただけたことも、とても嬉しかったです。こうして今、自分が作品を作らせていただいているのも、森さんをはじめ、本当にさまざまな方がバトンをつないでくださったおかげだと思っています。
いつか自分も、誰かにバトンを渡せるような作品を作っていけるように。そんなふうに日々を生きていきたいと、改めて感じました。

 

―そして、公開記念舞台挨拶が福岡、大阪、東京で決定しました。こちらへの意気込みをお願いします。

片野坂監督:様々な奇跡の飛び石を渡り、『しらぬひ』はようやく公開にたどり着くことができました。
作品が僕の手を離れ、この世界に解き放たれていくことに、喜びと同時に、怖さも感じています。
湊やべんちゃん、マサルは、この世界に受け入れてもらえるだろうか。
その不安は、今もあります。
それでも、ここから先は『しらぬひ』を信じて、送り出していきたいと思います。
この世界から受け取ってきたものを、映画を通して少しでも還元していけるように。

―最後に、メッセージをお願いします。

片野坂監督:制作にあたり、福岡市の「こども未来局」という子育て支援や児童福祉、次世代育成に関する業務を行う部署に取材させていただきました。
その際、担当者の方から、「湊のような厳しい境遇に置かれている子どもたちにとって、『愛で世界は救われました。めでたしめでたし』というだけの結末では、なかなか届かないこともある。では、彼らの心に本当に訴えかけることのできる映画とは、どんなものなんでしょうね」とお話しいただいたんです。
その言葉は、制作中ずっと自分の中に残っていました。簡単に答えの出る問いではありませんが、その問いを胸に置きながら、この作品を作りました。
一足先に本作をご覧いただいた方からは、本当にさまざまな感想をいただいています。僕自身、この作品を作るうえでずっと大切にしていたのは、観てくださった方に、この36分間そのものをひとつの映画体験として持ち帰っていただきたい、ということでした。
ぜひ一人でも多くの方にご覧いただいて、それぞれが何を感じたのか、僕自身も聞いてみたいです。

<インタビュアー・カメラマン/ダンディ佐伯・文責(編集)『れポたま!』編集部>

【作品概要】

『しらぬひ』(※読み:しらぬい)
公開日:2026年8月21日(金)新宿バルト9ほか全国順次ロードショー

<STORY>
1996年、夏の終わり。酒に溺れる父のもとで生きる10才の少年・湊は、“ひとつだけ願いを叶える光”〈しらぬひ〉に祈りを捧げるが、その願いは、やがて呪いへと変わっていく——。

<作品情報>
出演:あの 花澤香菜 三木眞一郎
原作・脚本・監督・作画監督:片野坂 亮
音楽:梅林太郎 主題歌:青葉市子「しらぬひ」(hermine)
美術監督:小林海聖 色彩設計:山本智子 撮影監督:津田涼介
制作プロデューサー:濱﨑周平 プロデューサー:新井修平
アニメーション制作:コミックス・ウェーブ・フィルム 製作:しらぬひ製作委員会 配給:ギャガ

2026年/日本/カラー/ビスタ/5.1ch/36分

●公式HP:https://gaga.ne.jp/shiranuhi/
●公式「X」:@shiranui_movie

配給:ギャガ
コピーライト表記:©2026 片野坂亮/しらぬひ製作委員会

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ご希望の方は『れポたま!』公式「X」@repotama(https://twitter.com/repotama/)をフォローし、当該記事のポストをリポストしてください。当選者にはDMにてこちらからご連絡させていただきます。
応募締め切り:2026年9月18日(金)23:59まで

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◎ご応募いただいた方の中から、厳正な抽選の上、当選者を決定いたします。
◎当選者様にはXのDMにてこちらからご連絡させていただきます。落選の場合のご連絡は致しません。
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