デジタルロックシンガー・VALSHEがミニアルバム『storyteller III ~THE SCARY STORIES~』を2024年9月18日(水)にリリース!
9月23日(月・祝)にはワンマンライブイベントを東京・GRIT at Shibuyaにて開催。昼はミニアルバムをもとにしたコンセプトライブ「VALSHE CONCEPT LIVE『storyteller III ~THE SCARY STORIES~』」、夜は自身の誕生日をお祝いする「VALSHE Birthday Party ’24 ~VAL FIRST LIVE~」が行なわれた。
ここでは「VALSHE CONCEPT LIVE『storyteller III ~THE SCARY STORIES~』」の模様をお届けする。
「VALSHEが見送る 七篇の物語」というコンセプトでリリースされた『storyteller III ~THE SCARY STORIES~』。本ライブはミニアルバムの世界観を立体的に楽しむギミックが満載で、集まったファンをよろこばせていた。
『THE SCARY STORIES』と書かれた本を手にしたVALSHEが「ストーリーテラー」としてステージに登場し、2014年に開催された『VALSHE OVER THE HORIZON 2nd CONTACT”storyteller 歌劇演舞~the final chapter~”』の登場人物、ベルと久しぶりの再会を果たし、ベルが住む世界“ネバーランド”の近況をやり取りするところから物語が始まる。
ネバーランドの崩壊を告げたVALSHEとベルの言葉と共に、ステージ背部全面に設置されているLEDスクリーンに歪みが生じると共に、アルバムにも収録されているインストゥルメンタル「Never Landing Just Falling Down」が響き渡る。どこまでもただ落ちていく、これからのストーリーが示唆されるような不穏な雰囲気が会場全体に広がり、ライブとは思えないほどの静寂に包まれる。
VALSHEが「傍観者を目撃者に仕立てる 上質な悪夢をご覧に入れましょう」と語ると、最初の物語『シンデレラ製造所』が展開した。
非凡の輝かしい世界に憧れる女性がシンデレラになるべく向かった「シンデレラ製造所」という場所で起こる、悪夢のような物語がVALSHEの口から紡がれ、物語に沿って主人公女性のシルエットが映し出される。VALSHEの動きと連動し、エフェクトやSEとともに物語が展開。惨憺たる結末を迎えたシンデレラストーリーが結末を迎えると共に、アルバムのリード曲「True meaning of…」を歌唱。自身のYouTubeチャンネルでも公開されているMVをバックにハイトーンが矢継ぎ早に続くサビを鬼気迫る表情で歌い上げた。
続いて『楽園実験』を知っているか、と客席に問うVALSHE。生命をおびやかすあらゆる外敵を遮断し、誰もが対等な立場として迎えられる「ユートピア(楽園)」と呼ばれる施設を舞台に、そこに希望を求めて集った人々の顛末が語られた。実際に行われた実証実験がモチーフとなっており、非現実的ながらなぜか一抹のリアリティが感じられる絶妙な展開に仕上がっていた。
途中、VALSHEからオーディエンスに向けて「聴こえていますか?」と語りかけ、一緒に「ユートピア!ユートピア!」と斉唱するなど、双方向でのやり取りで盛り上がる一幕もあり、これがライブであることを思い出させてくれる。
そして最後は「Utopia」を歌唱。自分が立つこの場所は本当に楽園なのか? ダンサブルな楽曲に込められたメッセージの余韻が残る中、この物語は結末を迎えた。
続く『消えた主人公』というエピソードでは、なんとVALSHEが語る物語の主人公(ダンサーを目指す青年)がいなくなっていることが判明。
本に挟まっていた彼からの手紙によると、ダンサーになる意味を失ってしまった主人公は「僕の物語を自分自身で終わらせることにした」とのこと。
刺々しく痛々しい歌詞をそのまま体現したような、攻撃的なエフェクトがふんだんに盛り込まれた映像を背景に「全心整形」を歌い終えたVALSHEは全てを見透かしたように急にスクリーンに歩みを進め手を伸ばす。空間が歪み“画面”という“物語”から逃げていた主人公が引き摺り出されてくる。「あなたは、あなた自身の物語を書き進めなければいけません」と、自身が紡ぐストーリーから逃げようとした主人公を諭すのだった。
続く物語は『化け物の正体』。
他人との言葉のコミュニケーションが原因で「感情の発露」を遮断してしまった人間の心情と心模様が語られる。人が生来持つ醜い部分と、それを別の形で(無意識的に)昇華していこうとする対比が美しい映像とともに語られ、最後には「Ctrl+Q」が歌唱される。歌詞の冒頭の情景を描写したかのような鈍色の空模様が印象的な映像を背景に、遠くを見据えて歌うVALSHEの表情は複雑な哀愁を纏って見えた。
続いてのエピソード『こどもをかえして』は、ここまでとは一風変わった物語が読み上げられた。
「原盤権」と呼ばれる、音楽業界における著作隣接権の一種の説明が唐突に始まり、これまでのシリアスなエピソードとはまったく違い、コミカルな演出が繰り広げられる。VALSHEも表情こそ変わらないものの、ビデオの早回しのようなマイムを披露、そのギャップに場内からは笑い声が。
しかし、この物語も展開はやはり「SCARY STORIES」。自分が作り出した楽曲にも関わらず、いつの間にか他人のものになっている……というショッキングな物語が、ギャップとともに皮肉を交えて語られた。最後は曲のリズムに合わせ力強くステップを踏みながら「ライトトラップ」を歌いあげる。「譲れないものがあるなら絶対に渡してはいけない」という単純明快なテーマが、それまでの物語と共に心にストレートに刺さる。
『首無し騎士』は一転ファンタジーの世界へ。手で触れたものを金に変える、不思議な力を持った王女と、彼女を殺す命を受けた騎士の悲しい物語が語られる。
自分の気持ちとは裏腹な騎士の立場と上司の命令に悩んだ末に、遂には王女を殺してしまったというその罪の重さにさいなまれた騎士は「私の愚かな頭を落としてください」と神に願う。神はその訴えをかなえたものの、その騎士の体はいまだに亡霊となり彷徨っているのだという。
背反な感情を象徴的に表現した映像はコントラストが強く、その曲調やVALSHEの歌唱と合間って心身共に重厚に響いてくる。まさに物語のタイトルそのものである楽曲「Dullahan」を情緒たっぷりに歌いきると、いよいよ最後の物語へ。
『聖者と愚者』というタイトルが表れたものの、ここで謎の双子がステージに登場。本来迎えるはずの筋書きとは異なった物語が始まり、驚きの表情を見せるVALSHE。
ストーリーテラーが生きる世界、ストーリーテラーが語る物語の世界、そのどちらとも違う世界が存在するという三重構造が明かされる中、その双子とベルは「SCARY STORIES」の物語の解釈が近しいと分かり、ベルは双子を懐柔できないかと興味を持ってゆく。
おそらく客席も展開を必死に追いかけようとしている中、「ギュゲスの指輪」が歌唱される。タイトルも哲学思考がもとになっており、アルバム曲の中でも群を抜いて解釈が難しいこの曲が、万華鏡のような映像を背景に神秘的に歌い上げられ、さらなる深い世界へと誘っていく。VALSHEが歌い終えると、再びベルが登場。双子を見ながら「汚くて醜い大人の世界の話を読んだ子供たちは、きっと大人になるのを嫌がる」と語る彼女に「本当にそうでしょうか?」と異議をとなえるVALSHE。
「この本に描かれているすべての物語は完結などしていない。まだ進められる物語を勝手に終わらせることはあってはならない」とこれまで読んできた本を次々に燃やしていくVALSHEを見て、あわてふためくベルだったが「あなたもきっと知りたくなる。彼らの本当の結末を」という言葉にしぶしぶ納得したのだった。
ラストナンバーの「標」では、これまで紡がれてきた物語が次々に燃えていき、物語はそれぞれの「未来」を残して終結した。
アンコールではVALSHEがオーディエンスに向けて感謝の気持ちを込めたメッセージを贈り、大きな拍手に包まれてステージは幕を閉じた。
様々な演出が随所にこめられ、コンセプトライブではありながら、短編を詰め込んだ演劇を見たような感覚にも囚われる。様々な顔を持つVALSHEの新たなライブの形をまざまざと見せつけられたような気がした。
<レポーター/ダンディ佐伯・文責(編集)『れポたま!』編集部>
【アフターインタビュー】
―9月23日に実施されたライブは1部、2部と全く違うコンセプトでの公演を行う一日でしたが、それぞれの公演についての感想をお伺いできますでしょうか?
VALSHEさん(以下、VALSHE):一部ではデビュー作からの続編作となるアルバムをステージに持ち込み、よりアルバム作品の世界に没入して頂けるような構成に仕立てました。LIVEを観る前と観た後で、楽曲に対する印象が変化していたり、理解が深まる一助となっていれば成功ですね。
立ち位置、きっかけ、映像とのリンク、すべてが決め込みのステージだったので、一瞬たりとも気の抜けない時間でした。
二部では打って変わってバースデーLIVEの枠組みの中、セットリストも幅広く、バースデーならではの企画的な時間も多くあり、フロアにもステージにも賑やかで柔和な時間が流れていたと思います。誕生日に紐づくLIVEは初めての開催だったので、気恥ずかしさもありましたが、ご来場の皆さまにお祝いして頂けたことがうれしかったですね。
非常に温度差のある一日だったと思います(笑)
―1部を拝見させていただいて、かなり仕込みにもお時間がかかったのではないかなと感じた素晴らしい公演でした。
ご準備されるなかで大変だったことや、お伺いできる範囲での裏話などございますでしょうか?
VALSHE:LIVEのためにそれぞれの楽曲に対して脚本を制作するところからはじまり、まず短期間でアルバム曲数分の脚本を執筆することが大変でしたし、それを一つの物語に帰結させることにも苦労がありました。全体をひとつの物語として見た際に破綻している要素はないか、登場人物の発言に矛盾がないかなど、細かな点に目を配ることにも時間を割く必要がありましたね。
脚本が完成したらすぐに映像制作がはじまりますが、今回の演出ではステージに立っているVALSHEと映像がリンクするシーンが肝になる部分も多く、かなり早い段階で会場に足を運び、実際に客席から見たVALSHEと映像の見え方、比率を細かくチェックする工程がありました。映像に映した人物と、実際にステージに立っているVALSHEを違和感なく配置することなど、観客の没入感を邪魔しないための準備は慎重に進めていましたね。
制作物の多くが今回お世話になった東京・GRIT at Shibuya様の映像・ステージサイズに合わせて制作しているので、他の場所には持ち込めない作品になっているのも、クリエイティブとしてはおもしろくて良いんじゃないかなと。
―12月31日(火)には「SCHRODINGER’s V」の追加公演とファンクラブイベントと楽しみな年末となりそうですがそれぞれどんな公演になりそうでしょうか?
VALSHE:昨年は一年に対して納められなかった感覚がずっと残っていたんですよ。いまは目の前の出来ることを一生懸命にやるという方向にシフトせざるを得ないというところで、だからこそ来年(2024年)のはじめ方と終わり方にはこだわりたいって気持ちは強かったんです。
そういう気持ちもあって、これまで実現することが叶っていなかった大晦日LIVEを企画しました。長期ツアーで幕開けした今年は本当にLIVEの一年でしたから、最後の最後までVALSHEの音楽に浸かってもらって、しっかりバル納めをしてもらいたいです。
そうしてそのあとは、ファンクラブ限定のイベントLIVEで今年一年を走り切った自分たちを祝えたら良いですよね。
―最後に、ファンのみなさまへメッセージをお願いいたします。
VALSHE:ツアーやアルバム発表、イベント出演など今年は目を見張る活発な一年を送ることができました。一年をまっすぐ直走ってきた締め括りにもうひと暴れできればと思います。今年最後のステージで会えることを楽しみにしています!
【公演概要】
「VALSHE GREETING TOUR『SCHRODINGER’s V-encore.-』」
開催日:2024年12月31日(火)
【東京】恵比寿CreAto ( https://www.creato.bz/ )
■開場 12:30 開演 13:00
■チケット料金:6,600円(税込)
※オールスタンディング ※整理番号入場 ※未就学児不可
「VALSHE presents OVER THE HISTORY ONLY EVENT LIVE『大忘年祭』〜今年こそ やってしまえよ バル納め〜」
開催日:2024年12月31日(火)
【東京】恵比寿CreAto
■開場 17:30 開演 18:00
■チケット料金:6,600円(税込)
※ファンクラブ限定ライブ ※オールスタンディング ※整理番号入場 ※未就学児不可
●公演詳細はコチラ
https://valshe.tokyo/news/event/1396/
【VALSHE公式HP】https://valshe.tokyo/
【VALSHE公式X】https://x.com/valshe9
【VALSHE公式YouTubeチャンネル】https://www.youtube.com/@VALSHE_official
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