きみコ(ヴォーカル&ギター)とササキジュン(ギター&コーラス)によるロックバンド・nano.RIPE。2人の約4年ぶりとなる7枚目のアルバム『不眠症のネコと夜』が10月12日(水)に発売される。「オーブ」や「声鳴文(せいめいぶん)」など、CD初収録曲や新曲を含めた全13曲を収録。「バンドサウンド」を大事にした1枚となっている。
全曲で歌詞を担当しているきみコさんに、作詞にまつわるエピソードを交えつつ、収録順に紹介していただいた。
―オリジナルアルバムの発売は約4年ぶりですね。
きみコさん(以下、きみコ):4年は長かったです。ぼくらのやっていることはずっと変わらないつもりなのですが、コロナ禍があり、ライブができずにお客さんと交流ができなくなってしまいましたから……。周囲の環境は大きく変わってしまいました。
デビュー10週年を迎えるタイミングでコロナ禍になってしまったというのもあり「『不眠症のネコと夜』でようやく10周年イヤーが始まった」という気持ちもありますね。
―『不眠症のネコと夜』のタイトルの意味は?
きみコ:コロナ禍で「当たり前のことが当たり前ではなくなる」のを痛感しまして。ネコが不眠症って、あまり想像つかないですよね? 「常識が通用しないこと」の例えとしてこのタイトルにしました。
それと、ぼくらのアルバムは『スタジオジ●リ』作品の「タイトルに『の』が入っているとヒットする」というジンクスをオマージュして(笑)、なるべく「の」を入れることにしているんです。今回もそのコンセプトは変えずにいこうと。
―リード曲の「トリックスター」は聴くと元気が出てくる、アッパーソングに仕上がっています。
きみコ:今夏「つきかがみのとう」というライブツアーを開催させていただいたのですが、大阪公演の直前にジュン(ササキジュンさん)が曲を書いて。ライブに向かう途中の車のなかで詞を書きあげたら「もう上がったの!? 早いね」と驚かれました。そのくらい、自分のなかにメロディがスッと入ってきたんです。
実はnano.RIPEはこれまで飛び切り明るい曲をアルバムのリードトラックにしたことがなくて。「この曲をライブの定番ソングにしていきたい」という気持ちも込めて作りました。
―イントロからインパクトのある歌詞と勢いのあるメロディで、引き込まれてしまいました。
きみコ:「とにかく印象的な歌い出しにしよう」という目標を持って書きましたので、そう言っていただけるとうれしいですね。なお、歌い方にこだわったぶん、レコーディングは苦戦しまして……。時間をかけた甲斐があって、納得のいく1曲になりました!
―「ソアー」は「全国高校野球選手権大会」埼玉県予選、いわゆる「甲子園予選」のイメージソングです。
きみコ:2019年に「ローリエ」という曲で初めて高校野球中継とタイアップさせていただいたのですが、そのときのことが忘れられなくて。今回は「ぜひこの曲を使ってください!」とぼくらから売り込んだんです。
―制作期間はどのくらいだったのでしょう?
きみコ:「高校野球」という明確なテーマがありましたので、(ササキ)ジュンから曲が上がってくるのも早かったし、作詞もスムーズにできました。キラキラした青春だけでなく、白球を追いかけるときに感じるであろう「苦しみ」も書きたかったんです。
甲子園は、野球をやっている少年少女にとっては誰もが憧れる場所だと思うのですが、わき目をふらずに「聖地」を目指せる子って、実はほとんどいないんじゃないかと思うんです。野球を嫌いになりそうになった人もたくさんいると思いまして。ただの「応援ソング」という形にはしたくなかったので、詞にもぜひ注目していただきたいですね。
いつかぼくらの曲がブラスバンド部の演奏で、高校野球のグラウンドに響きわたってくれたらいいな。
―「ソアー」のMusic Videoには、ファンから募集した写真が使われるそうですね。
きみコ:今度ファンクラブの旅行がありまして、そこでまた撮影する予定です。なるべく多くの写真を使えるように、頑張って編集します!
―続いて、アニメ『のんのんびより のんすとっぷ』主題歌「つぎはぎもよう」です。
きみコ:アルバムコンセプトのなかに「バンドサウンドを押し出していきたい」というものがありまして。「トリックスター」「ソアー」と並べてみたら、すごくすわりがよかったんです。この曲でぼくらのことを知ってくださった方も多いと思いますし、なるべく前半に入れたい、という想いもありました。
―「ネコに日だまり」は「つぎはぎもよう」と同じく、ゆったりしたナンバーです。
きみコ:実は、曲自体は6~7年前には完成していたのですが、なかなか世の中に出すタイミングがなく……。満を持しての収録となりました。アレンジはジュンに全部任せたのですが、原曲に比べて「温かさ」が増したかな、と思います。
―「トロット」は、そのタイトルの由来も気になります。
きみコ:以前、NHK『みんなのうた』で採用された「ヨルガオ」という作品で、外山光男さんに映像を担当していただきまして。あたしは外山さんが手がけられた『トロット』という作品が大好きで、それが高じて「子どもにしか見えない、話せない、架空の友達」である「トロット」というキャラクターを作り出しました。外山さんには「きみコさんが作る『トロット』はこんな内容なんですね」と笑顔で言っていただきまして、うれしかったです。
―「クエスト」は、冒険心をくすぐられる明るい曲です。
きみコ:実は最初、「『クエスト』をリード曲にしよう」という案が出ていたのですが、「バンドサウンド」というアルバムのコンセプトから少し外れていたので、この位置に落ち着きました。nano.RIPEのライブツアーでは「冒険」絡みのタイトルをつけることが多く、ぼくららしい曲になったと思います。
―「声鳴文」もタイトルが特徴的ですね。
きみコ:この曲は昨年11月に発売したミニアルバム『小さな祈りの書』の収録曲です。これから先のnano.RIPEの活動に向けた「決意表明」のような歌詞になっています。詞を書き終えたあと、タイトルを決める段階で「『声』という文字を入れたい」という想いは強くありまして。主張や訴えを書いた文書である「声明文」に「鳴らす」という言葉をエッセンスとして取り込んでみました。我ながら「天才!」と思ったのですが、文字の変換が大変なんです(苦笑)
ここまで「トロット」、「クエスト」、そして「声鳴文」と、あたしの心のなかに秘めた想いを歌詞にした曲が並びました。
―「ペカド」は切なさを感じるラブソングです。
きみコ:nano.RIPEにはこれまで「恋愛ソング」と呼べるような曲はあまり多くなかったんです。なので、これだけ生々しい恋愛ソングが受け入れられるのか、ちょっと不安ですね。相手に対して「あなた」と呼びかける歌詞も初めてなので……。でも、すごくカッコいいメロディラインですし、胸を張って送り出せるナンバーだと思います。
―「ロス」の詞は、どのようなコンセプトで書かれたのでしょう?
きみコ:昨年、うちの猫が1人死んでしまいまして。書き出したときはとくに意識していなかったのですが、結果的に「愛猫の死」がテーマになりました。
あたしは泣くことに関しては肯定的で「涙を流せるというのは救いでもある」と考えていたので、そのことをその子の死とリンクさせました。
―「ブローチ」は疾走感と切なさが同居するようなナンバーです。
きみコ:この曲は、ジュンから「入れたい」と提案されました。だいぶ前に作った曲をリアレンジしたのですが、かなり苦労したみたいです。でもそのぶん相当手ごたえを感じているみたいですね。メロが次々に変わっていくので、キャッチーな曲ではないかもしれないのですが、全体ではしっかりとまとまっているんです。
―「いたいけな春と空」は作曲もきみコさんが担当されています。
きみコ:お客さんからよく「nano.RIPEの曲は散歩道や田舎道に合う」と言っていただきまして。とてもうれしいので、そんなシチュエーションに合いそうな曲を作りました。ジュンから「曲のコンセプトを考えると、きみコが作ったほうがいいと思う」と言われまして、久々に作曲も担当しました。
―「オーブ」は静かに始まるイントロが印象的です。
きみコ:この曲はコロナ禍になってから作りました。いままでは「あたしはこう思う」ということを詞にしてきたのですが、初めて誰かのためを想って書いたんです。そういう意味もあり「アルバムには絶対に入れたい」と思った1曲です。
―「ラストチャプター」はラストトラックにふさわしい、希望あふれるナンバーです。
きみコ:ライブでは本編ラストやアンコールで披露することが多い楽曲です。収録曲にバンドサウンドが多いなか、この曲はしっかりと「弦」が入っていて、最後の曲としてしっかり役割を果たしてくれていると思います。
「ラストチャプター」というタイトルは、nano.RIPEが2人になったとき「これからぼくらの“終わらない最終章”が始まります」と宣言したことにも関わっています。「終わらない」とは言っても、いつかは終わるときが必ず来てしまうんですね。その事実から目をそらさずに歌っていきたいと、ずっと思いながら活動していますし、その意志が最後の「誰にもなれない物語で ぼくらしくあるために」という歌詞に集約されています。
―そう言えば、アーティスト写真にも「らしさ」が出ていますね。
きみコ:ジュンと2人になってからこれまでアーティスト写真は「旅シリーズ」と称してストーリーをつけているんですが、リード曲の「トリックスター」が明るいナンバーですので「カラフルな街に2人がたどり着いた」というコンセプトで、ポップさも感じられるデザインになったと思います。
ジャケットも、全幅の信頼を置けるデザイナーさんに手がけていただきましたし、すべてにおいて4年分の想いが詰まった、最高傑作ができたと自負しています!
―10月にはアコースティックツアー「nano.RIPE ACOUSTIC TOUR 『にんぎょのいわば』」、そして11月からはアルバムを引っさげたライブツアー「nano.RIPE TOUR 2022-2023 『こおりのどうくつ』」がスタートします。
きみコ:新曲がたくさんあるので練習が大変ではありますが、ライブでこの子(曲)たちがどのように成長していくのか楽しみです。
各地の名物を堪能しつつ(笑)、頑張ります!
<インタビュアー/ダンディ佐伯・文責(編集)『れポたま!』編集部>
【アルバム概要】
「不眠症のネコと夜」
2022年10月12日(水)発売
価格:3,300円(税込)
01.トリックスター
作詞:きみコ / 作曲:佐々木淳 / 編曲:佐々木淳
02.ソアー
(「第104回全国高等学校野球選手権埼玉大会中継」「MRO北陸放送ラジオ高校野球中継」テーマソング)
作詞:きみコ / 作曲:佐々木 淳 / 編曲:佐々木 淳
03.つぎはぎもよう
(TVアニメ「のんのんびより のんすとっぷ」オープニング主題歌)
作詞:きみコ / 作曲:きみコ / 編曲:佐々木 淳
04.ネコに日だまり
作詞:きみコ / 作曲:きみコ / 編曲:佐々木 淳
05.トロット
作詞:きみコ / 作曲:佐々木 淳 / 編曲:出羽良彰
06.クエスト
作詞:きみコ / 作曲:佐々木 淳 / 編曲:佐々木 淳
07.声鳴文
作詞:きみコ / 作曲:佐々木 淳 / 編曲:佐々木 淳
08.ペカド
作詞:きみコ / 作曲:佐々木 淳 / 編曲:佐々木 淳
09.ロス
作詞:きみコ / 作曲:佐々木 淳 / 編曲:佐々木 淳
10.ブローチ
作詞:きみコ / 作曲:佐々木 淳 / 編曲:佐々木 淳
11.いたいけな春と空
作詞:きみコ / 作曲:きみコ / 編曲:佐々木 淳
12.オーブ
作詞:きみコ / 作曲:佐々木 淳 / 編曲:佐々木 淳
13.ラストチャプター
(TV アニメ「食戟のソーマ 豪ノ皿」オープニング主題歌)
作詞:きみコ / 作曲:佐々木 淳 / 編曲:山下洋介
【リリースイベント情報】
nano.RIPE「不眠症のネコと夜」発売記念アコースティックミニライブ&CDサイン会
■日程:2022年10月28日(金)
【東京】タワーレコード新宿店9F イベントスペース
■集合時間:19:10
■開演時間:19:30
【ライブ情報】
nano.RIPE ACOUSTIC TOUR「にんぎょのいわば」
【静岡公演】
■2022年10月15日(土)静岡UHU
OPEN 17:00 / START 17:30
【京都公演】
■2022年10月16日(日)紫明会館
OPEN 16:30 / START 17:00
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nano.RIPE TOUR 2022-2023 「こおりのどうくつ」
【宮城公演】
■2022年11月5日(土)仙台enn 3rd
OPEN 17:00 / START 17:30
【大阪公演】
■2022年11月19日(土)梅田バナナホール
OPEN 17:00 / START 17:30
【愛知公演】
■2022年11月20日(日)名古屋ell.FITS ALL
OPEN 17:00 / START 17:30
【石川公演】
■2022年12月3日(土)金沢AZ
OPEN 17:00 / START 17:30
■2022年12月4日(日)金沢AZ
OPEN 16:30 / START 17:00
【東京公演】
■2023年1月14日(土)渋谷CLUB QUATTRO
OPEN 17:00 / START 17:45
チケット:前売 各5,000円 / 当日 各5,500円(税込・1ドリンク料金別・整理番号有・全自由)
●nano.RIPE 公式サイト
http://nanoripe.com/
●nano.RIPE公式ツイッター
@nanoripe_info
●nano.RIPE きみコ 公式ツイッター
@nanoripekimiko
●nano.RIPE ササキジュン 公式ツイッター
@nanoripejun
【プレゼント】
きみコさんのサイン色紙を1名にプレゼント!
ご希望の方は『れポたま!』公式ツイッター@repotama(https://twitter.com/repotama/)をフォローし、当該記事のツイートをリツイートしてください。当選者にはDMにてこちらからご連絡させていただきます。
応募締め切り:2022年10月28日(金)23:59まで