「色々な人に“自由な楽しみ方をしてもらえる”作品にしたい」『宇宙少女漂流記』アベユーイチ監督 インタビュー

By, 2021年8月30日



アニメーション制作会社の十文字と、出版社のRocket Base LLC、映画興行配給会社の東京テアトルが手がける、7人の少女たちが宇宙で繰り広げるSF冒険ファンタジー、『宇宙少女漂流記』。現在、作品YouTubeチャンネルにて、平日にボイスストーリーが更新されている。
今回は『ウルトラマン』シリーズをはじめ、様々な特撮作品やアニメ作品を手がけ、本作で監督を務めているアベユーイチ氏に、本作を引き受けた理由から魅力まで、たっぷりとうかがってきた。

―そもそも、どのような経緯で本コンテンツに関わることになったのでしょうか?

アベ監督:十文字の堀さんから「手を貸してくれない?」と誘われたのが最初です。僕は元々SFが大好きでしたので、キャラクターの設定画や作品コンセプトを見せていただいて「これはぜひ関わらせていただきたい」と思いました。
また「ボイスストーリー」という形で配信するのがとても面白く感じたことも、引き受けたひとつの理由です。

―初期設定から監督自身が手を加えられた点はありましたか?

アベ監督:ボイスストーリーで登場キャラクターの姿が見えないので、名前を特徴的にする、ということをしましたね。プロットを書く段階でSF要素も大きく構築しなおしました。
それと、コンセプトが「180日の物語」だったので、「朝ドラ」形式でお話を180回分作ろう、という無謀な提案をしたのは、実は私です(笑)

―攻めましたね(笑)

アベ監督:まずは30分のテレビアニメシリーズでいうと2クール(24話)分くらいの分量になるように、プロットを考えました。そのときはまだ自分が監督をやるつもりは正直なく、「脚本」という形で携わらせてもらえばいいかな、みたいなノリで考えていたんです。でも、「このやり方だと、ほかの人には任せづらいな」、と思いまして……。
取りあえずできるところまでひとりでやってみて、難しそうならほかの脚本家も入れよう、ということでスタートしました。

―今年7月まで、準備期間がなかったように思えますが。

アベ監督:実は、当初は2021年1月から配信が始まる予定で、もっと短い期間で仕込まなければならなかったんです。でも、新型コロナの影響もあって開始時期が半年ほど延びてしまったんですね。
メインキャストに新人の子が多いので、経験を積んでもらうには結果的にいい猶予になったかな、と思います。

―ボイスストーリーだと、シチュエーションを把握するのも難しいですからね。準備期間は大事だということでしょうか?

アベ:はい。このあたりから監督としてちゃんと演出しないといけないな、という気持ちで臨むことになりました。
なんだかんだで、いつの間にか僕がプロジェクトの中核を担うことになってしまい「堀さんに、してやられたな」と(笑)

―ボイスストーリー収録は大変ですか?

アベ監督:そうですね。絵がないぶん、自分たちでシーンを想像しながら演じなければならないという点では、アニメのアフレコよりもかなり難しいと思います。
実は、最初は劇伴をここまでたくさん入れる予定もなかったんです。経験の浅い彼女たちに、少しでも演じやすい土壌を作ってあげることが必要だと判断したんですよね。
でも、最初に比べたらかなり上達しましたし、いまは収録に立ち会うたびにワクワクしています。

―ちなみに少女たちが乗っている「キャロットエンデバー号」は、どなたが命名されたのでしょう?

アベ監督:僕が考えました。実在するスペースシャトルをもじったのですが、女の子たちが乗りたくなるには、名前もかわいいほうがいいな、と思いまして。

―ところで監督は、ファンに対し「本作で自由に遊んで欲しい」という想いがとても強いそうですね。

アベ監督:はい。作品が好きな人にオモチャをあげる……という表現が正しいかどうかわかりませんが、みなさんに『宇宙少女漂流記』で遊んでいただければうれしいです。一般的に、アニメは「絵に声をあてる」作り方をするのですが、この作品はちょっとした挿絵があるだけなので、「声に絵をあてる」という逆の発想で遊べるのではないかと思うんです。好きな絵を好きなシーンに当てて楽しんでもらうってアイデアです。
音源の権利関係をクリアするのは大変だとは思いますが、想いを純粋にぶつけていただけるのでしたら、フランクに許諾を出せる素地を増やすことはいいと思うんですね。絵がないからこそ「その不完全さを補完する」という価値を見出せればいいな、と思います。

―実現したら、よろこぶファンは多いと思いますよ。

アベ監督:絵を描ける人はたくさんいるけれど、音響関係のクリエイティブな面を完成するのは難しい。だから、その素材を提供したいんです。
『宇宙少女漂流記』は一話一話が短いので、仲間うちで「この回は自分が担当するから、君はこの回をお願い!」みたいな感じで、自分なりの二次著創作を楽しく作ってもらえたりしたらうれしいです。

―最後に、これから『宇宙少女漂流記』に触れるみなさんにメッセージをお願いします。

アベ監督:たくさんの女の子たちがワイワイしながら宇宙旅行を楽しむ……みたいなストーリーを予想している方は、いい意味で裏切られると思います。一話一話、ほどよいシリアス度とコメディ度でお届けしておりますので、ぜひ聴いてみてください!

<Text・Photo/ダンディ佐伯>

【『宇宙少女漂流記』第1週「オールト雲ってなんですか?」第1回】
https://www.youtube.com/watch?v=41HVOW3-gms&t=5s

【書籍概要】
『ドラゴンマガジン』(KADOKAWA刊)にて、「宇宙少女航海日誌」連載中!
https://fantasiabunko.jp/magazine/new-magazine.html

【配信概要】
・マンガ「宇宙少女漂流記」公式Twitterで毎日配信中!
・『宇宙少女漂流記』応援ラジオ「We’ll tell you.」毎週土曜日夜20時~「宇宙少女漂流記」公式YouTubeチャンネルで配信中!

☆最新情報は各サイトをチェック!
●『宇宙少女漂流記』プロジェクト公式サイト
http://rocket-base.jp/project/spacegirl2021/
●『宇宙少女漂流記』公式ツイッター
@spacegirl2021
●『宇宙少女漂流記』公式チャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCQAoSYLv4dNdWzXScHsSedA

(C)宇宙少女プロジェクト