“朗読”の新たな楽しみ方を提唱するバトルが開幕! 『READING × READING LOFT9 Shibuya ルーキー声優対決の陣』レポート

By, 2020年2月14日



2019年10月、徳島『マチ★アソビvol.23』にて開催された異色の朗読バトルイベント『READING × READING』の第2弾が2月11日、東京・LOFT9 Shibuyaで開催された。
当日は星海社の編集者・太田克史氏が司会のもとでイベントは進行。EARLYWING・AIR AGENCY・スワロウ・マウスプロモーションの4つの事務所が送り出す期待の若手声優がその声と演技力を武器にガチンコ勝負を行なった。

 

今回のイベントのために朗読作品を書き下ろした渡辺浩弐氏(小説家)、斜線堂有紀氏(小説家)、乙一氏(小説家)。渡辺氏と斜線堂氏は審査員としても登壇し、朗読を行なったキャスト陣に的確な感想コメントを贈った。

そのほか、第1回でも審査員を務めた AIR AGENCY の渡部栄一氏と前回チャンピオンの声優・清水彩香さん(AIR AGENCY)が審査員として登壇。さらに今回の目玉企画のひとつでもある、出場者に対して「声優演技指導」を行なうスタジオマウス代表・納谷僚介氏も出演し、豪華な顔ぶれとなった。

まずは審査員と納谷氏によるあいさつ。
渡辺氏は「いつもは2,250文字あわせで書くことが多いので、1,500文字に慣れるために1ヶ月ほど時間がかかりました。僕の作品がどう料理されるかは、演出家、声優さん次第だと思いますので、とても楽しみです」、斜線堂氏は「1,500文字は小説として成立するかしないかのギリギリのところですよね。いち観客としてどんな結果になるのかワクワクします」とそれぞれコメント。

前回覇者の清水さんは10月のイベントについて「非常にやりづらかったです」と回顧すると、渡部氏も「ジャッジには苦慮しました」と語った。
納谷氏は「作家先生が見学に来ていると、僕の解釈と先生の解釈が食い違っていないかどうか心配で、しんどいです」と苦笑いしつつ「物語をどうふくらませられるかが僕らの仕事なので」と意気込んでいた。

登壇者によるあいさつが終わると、いよいよ朗読バトルが開始! 対決に使用された作品は以下のとおり。渡辺氏のコメントにあったように、すべて1,500文字以内に収められている。

【乙一】
『未来から来た息子』
『催眠術』

【斜線堂有紀】
『その花の意味も知らなかった』
『殺意の融解点』

【渡辺浩弐】
『父の思いで』
『母の想いで』

1回戦の第1試合は川島零士さん(AIR AGENCY)VS.寺田晴名さん(スワロウ)による対決。戦う前の抽せんにより、川島さんは『未来から来た息子』、寺田さんは『催眠術』に決定!

 

まずは「プレ朗読」ということで、ふたりが思い思いの読み方で朗読していく。2作品が披露されると、納谷氏からの「演技指導タイム」へ突入。「人間は飽きる生き物。ずっと同じ調子で話しているとだんだんと飽きてくるので、極端な話『聴かせたいところ』と『捨てるところ』のメリハリをつけてみては?」ほか、それぞれの作品に関する読み方のレクチャーが行なわれ、本番へ。
再度朗読を聞いた清水さんは「間とスピード。『1、2秒空けたらすごく良くなる』と思っていた部分がすごく変わった」、渡部氏も「聴衆への意識が明らかに変わった」とふたりの読み方の変化を評価していた。
熱戦の結果は、寺田さんの勝利! 決勝戦へとコマを進めた。

 

続く第2試合は、浅見春那さん(EARLYWING)VS.柳原かなこさん(マウスプロモーション)。浅見さんは『その花の意味も知らなかった』、柳原さんは『殺意の融解点』にチャレンジ。プレ朗読を終えると、浅見さんは「これだけの人がいると、どうしても雑念が入ってきます……」と苦笑い。納谷氏による「演技指導タイム」では、「文章の中には、人の興味を引く部分があるので、そこをうまくとらえられれば、おのずとうまくいくはず」とアドバイス。また、「朗読している自分を『誰』と想定するのかも大事」との言葉も贈られた。

本番を終えた柳原さんは「頭をフル回転させながら読みました」と充実感あふれる表情を見せた。清水さんからは「文章中にある句読点を敢えてなしにして、畳み掛けていくのもひとつの手。お客さんを現実に戻してはいけないと思うので」とテクニックも伝授された。
そして、ジャッジタイムでは僅差の結果、柳原さんの勝利となった。

決勝戦は「黒渡辺」「白渡辺」と呼ばれるくらいに対照的な物語を描く渡辺氏の作品を舞台にした対決。寺田さんが「白渡辺」の『父の思いで』、柳原さんが「黒渡辺」の『母の想いで』を読むことに。決勝ではプレ朗読と演技指導がなく、ふたりの持つスキルが純粋にぶつかり合う一発勝負。聴き終えた渡辺氏が思わず「『この小説、面白いじゃん!』と我ながら思ってしまった」という高レベルの勝負が展開し、紙一重の勝負は柳原さんに軍配が上がった。

最後は川島さん、浅見さんもふたたび登壇。川島さんは「長時間、ずっと真剣に聴いてくださったお客さんの集中力がすごかったです。お付き合いいただきありがとうございます!」、浅見さんは「今回いただいたディレクションを役者・声優業に生かしていきたいです!」とそれぞれ感想を述べた。

太田氏から「またやりましょう」と振られた納谷さんは
「役者の芝居に触れる機会は多いかもしれませんが、朗読をどう楽しむかを教えてくれる場はあまりないと思うんです。『READING × READING』が、朗読を楽しむための“説明書”になればいいなと思いますし、今後も続けていかざるを得ないと思います」と早くも次の開催へ向けてモチベーションを高めていた。

<Text・Photo/ダンディ佐伯>
☆ページ下部に写真一覧あり。

【イベント概要】
『READING × READING LOFT9 Shibuya ルーキー声優対決の陣』
2020年2月11日(火・祝)

【東京】LOFT9 Shibuya

<出演者>
浅見春那(EARLYWING)
川島零士(AIR AGENCY)
寺田晴名(スワロウ)
柳原かなこ(マウスプロモーション)

<ゲスト>
乙一(小説家)
清水彩香(声優)
斜線堂有紀(小説家)
納谷僚介(スタジオマウス)
渡辺浩弐(小説家)
渡部栄一(AIR AGENCY)

<司会>
太田克史(星海社)

●イベント詳細
https://www.loft-prj.co.jp/schedule/loft9/138176