「劇団フルタ丸」待望の2018年本公演が5月30日(水)より東京・浅草九劇で開幕。下北沢などを中心に舞台を披露してきた彼らが、自信作を引っさげて浅草に殴り込みをかける。
毎公演変わる、演劇好きならずとも大注目の個性派ぞろいの客演も物語を盛り上げること必至だ。
今回は稽古場にお邪魔し、メンバーにお話をうかがってきた。
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―これまでの稽古を振り返ってみていかがですか?
真帆さん(以下、真帆):今回はまたすごい役をやることになったな、と(笑)。スケジュールでは約半分の稽古を終えたところなのですが、私の中では「あれ、もう半分? あのシーンはどう終わってたっけ?」と不安になるというか、不思議な感じなんです。
宮内勇輝さん(以下、宮内):その気持ち、分かる(笑)。僕も今回は初めてやるような役を担当するのですが、「間」が大事だったり、チームワークがものをいうような部分があって。真帆のようにシーンどうしのつながりがうまく見えないところもたくさんあり、みんなの中で自信になるためにはもう少し時間がかかるかな、と思えます。シーンごとの濃密さが今作のポイントですね。
清水洋介さん(以下、清水):そうですね……。僕もようやく説明書を読み終えた、という段階でしょうか? 準備ができるとすぐに遊んでしまう性格なのでそこは適度に気をつけつつ(笑)、無事に完成させて浅草に乗り込みたいです。
掛け合いの感触は、いい意味で今までどおりの「フルタ丸」なので「あとはメンバーのみなさん、よろしくお願いします」という感じです(笑)。
工藤優太さん(以下、工藤):メンバーそれぞれが自分の中で演じるに当たっての空気感を持っていると思うのですが、それをみんなで共有して、シーンごとの完成度を高めていきたいです。
篠原友紀さん(以下、篠原):私はいつも稽古をするときに、この6人で初めてやった本公演『僕は父のプロポーズの言葉を知らない』のことを考えるのですが、6人でやってきたことが結果として出るような公演な気がします。あの頃にくらべて阿吽の呼吸でできるようになってきたというのもありますし、ここから個々のキャラクターに肉付けをしていきたいです。
フルタジュンさん(以下、フルタ):全体を通しての稽古はこれからなのですが、いい作品になるという予感はしています。裏づけられるものはないのですが、脚本を書いていてワクワクするようなときは間違いなくいいモノができた実感があるので。今回も「終わらせたくない」と思いながら書いていて、でもエンドマークはつけなくちゃならなくて。
―日替わりでの客演のみなさんを楽しみに、劇場に足を運ばれるファンもいるかと思います。
真帆:まだ一緒に稽古をさせていただいていないので、私たちも稽古をできるのが今からすごく楽しみなんです。
宮内:みなさん尊敬する人たちで、お客さんとして見ていたいと思っている方達ばかりなので(笑)、どう絡んでいけばいいのか不安もありますけど……。
清水:猛者たちが一堂に会した、という感じですね。これまでのフルタ丸は本番に向けてみんなでガッと突き進んでいくイメージなのですが、今回は本番直前に客演のみなさんが稽古に参加されるんです。正直イメージが沸かないんですけど(苦笑)、不安よりは楽しみな気持ちのほうがいっぱいです。
真帆:時間があればぜひ全公演を通してご覧になっていただきたいです!
フルタ:今回お願いした客演のみなさんは、メンバーで相談してオファーさせていただきました。みなさん5人とも役どころが違うのですが、その人物設定は当日パンフレットで発表しますので、それも参考にぜひ楽しみにしてください。
―ネタバレ厳禁かと思いますが、役者さんの魅力をちょっとだけ教えて下さい。私は個人的に以前インタビュー経験のある大勝かおりさんが特に気になっています。
フルタ:大勝さんだからこそのキャラクターなので、そこはもう大いに期待していただきたいです(笑)。先日(水曜日出演の)松尾英太郎さん(劇団スパイスガーデン)の舞台を観に行く機会があったのですが、本番で全部持っていかれる予感がしました。
宮内:松尾さんの出演中は「スターマリオ」状態なのですが、先日の公演ではその無敵時間が長くなっている感じがしましたね(笑)。
フルタ:背油たっぷりなのに胃にもたれない感じがすごいです。
清水:野球やサッカーなどでいうところの「助っ人外国人」ですよ。
一同:(笑)。
フルタ:また、木曜日に出演される里村孝雄さんですが、フルタ丸メンバーでは演じることができないような年齢相応の役をガッツリと演じてもらえるのが楽しみです。
清水:実は、僕が演劇を始めて以来、ずっとお世話になっているお方なのですが、出会った役者の中で里村さん以上に魅力的な方はそうはいないです。
フルタ:日曜日に出演の西川智宏さん(ラビット番長/演劇制作体V-NET)は、最も自由度が高めな役を演じていただく予定ですので、全開の西川さんをお楽しみに、と(笑)。
篠原:私は土曜日に出演予定のインコさんとは何度も共演させていただいているので、稽古によそ行きの顔で入ってこられるのがすごく楽しみです(笑)。普段はとても紳士な方なのですが、ポロポロと出てしまう「少年」がとても愛おしいです。
工藤:里村さんとは飲みの席でご一緒させていただきましたが、すごくインパクトのある話を聞かせてもらいましたので、とても印象に残っています。
清水:もしかして、Y談?
工藤:そこは想像にお任せします(笑)。劇中でもアドリブをすごく入れると聞いたことがありますし、今からドキドキしてます。
清水:僕も個人的に「今回は清水に芝居というものを教えてやる」と言われていますので、貴重な機会と思い、ご教示願いたいと。
―作品に少し関係した質問をさせていただきたいのですが、皆さんが昔から好きな童話やファンタジー作品はありますか?
清水:『エルマーのぼうけん』シリーズですね。主人公のエルマーが広い川を渡るときに、ワニのしっぽに持っていたぺろぺろキャンディーを巻かせて背中を踏んで渡っていく、という奇抜なアイデアがすごく印象に残ってるんです。
フルタ:『雨やどりはすべり台の下で』という短編集に入っている「スカイハイツ・オーケストラ」という作品がすごく好きで、大人になって知ったのですが、作者の名前が「岡田淳」だったんです。僕の本名(古田淳)とひと文字違いで、運命を感じました。
公園で子どもたちが遊んでいたら雨が降ってきて、すべり台の下で「ある不思議な人」にまつわる話をそれぞれの視点で話をするのですが、いつかこの作品を舞台化したいとさえ思っています。
宮内:宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』です。幼少時代に影絵の方の挿絵が載っている本を親に読み聞かせてもらっていたのですが、どこの国の人だか分からないジョバンニとカムパネルラの友情や、切ない物語が幼心に響きました。
篠原:私も実は『銀河鉄道の夜』なんです。私がちゃんと読んだのは大人になってからで、宮沢賢治が友人や後輩に宛てた手紙を集めた本を読んだのが宮沢作品にハマッたきっかけで「この人はどんな文章を書くんだろう?」と気になりまして。
キャラクターの描き方がとてもなまめかしくて、ずっと緊張感が続いてきて、ラストに「こうなるんだ」というなんとも言えない展開に衝撃を受けた作品です。
工藤:高校時代に観た1998年に公開された映画『天使のくれた時間』です。違う選択肢を選んでいたら人生が変わるのか? というのがテーマだったのですが、すごく面白かったです。
真帆:2001年に公開された『A.I.』という映画です。「家族愛」がテーマになっているのですが、ストーリーを思い出すだけで涙が出てきますね。
上記メンバーのコメントに今作のテーマが隠されているかも……?
公開日をお楽しみに!
<Text・Photo/ダンディ佐伯>
【公演概要】
『寂しい時だけでいいから』
5月30日(水)~6月3日(日)
【東京】浅草九劇
作・演出:フルタジュン
出演:宮内勇輝 / 真帆 / 篠原友紀 / 工藤優太 / 清水洋介 / フルタジュン
+日替わりゲスト
●チケットはこちらから!
https://www.quartet-online.net/ticket/furutamaru2018
<STORY>
理想のマイホームが並ぶ住宅展示場。
人々の賑わいが消えて、
偶像の街に夜が訪れる。
今夜も孤独な警備員は展示場を歩く。
マッチでも擦ったように、
誰もいないはずの家に明かりが灯る。
覗くと絵に描いたような家族の姿があった。
目の前で繰り広げられる
怒涛のホームドラマ。
男は息をのみながら気付いてしまう。
自分がピースとしてハマるポジションが
空いていることに。