【プレゼントあり】形(かたち)ない思いを人に届けたい!震災を経て佐藤ひろ美がたどり着いた境地とは? 佐藤ひろ美ニューアルバム『RiSE』発売記念インタビュー

By, 2012年8月21日



デビュー12年目を迎えた佐藤ひろ美さんのニューアルバムが2012年8月22日にリリースされます。
PCゲームでの数々の人気楽曲はもちろん、昨年発生した東日本大震災で甚大な被害を受けた佐藤さんの地元、大槌町に伝わる「吉里吉里地方の子守歌」や大槌町・蓬莱(ほうらい)島をモデルにした「ひょっこりひょうたん島」のテーマソングのカバーなど、郷土の復興への願いを乗せた楽曲も収録。また、表題曲「RiSE」はElements Gardenの若き作曲家、中山真斗さんとタッグを組み、大切な人への素直な思いと、前向きに未来を見据える強さを歌い上げています。
今回、そのニューアルバム『RiSE』の発売を記念して、れポたま!では佐藤さんにインタビューを敢行。それぞれの楽曲について、震災を経て感じたこと、故郷大槌町への思いなどたくさん語ってもらいました。

◆震災から自分を奮い立たせようと思い書いた「RiSE」。それは同時に日々精一杯生きている人へ向けての幅広い応援歌にもなっている

――今回のアルバムでもElements Gardenのスタッフがたくさん参加されてますね。

佐藤ひろ美さん(以下、佐藤):はい。、Elements Gardenのみんなにはずっと支えられていて、これまでベストアルバムを除いて6枚のアルバムを出しているのですが、表題曲はElements Gardenの人間が作ってきています。Elements Gardenの中で25歳になったら必ず佐藤の表題曲をやるという掟があるんです(笑)。今年は25歳になった中山くんが表題曲を作ってくれました。

その中山くんが一回で制作した「RiSE」は、本当に素晴らしくて感動しました。去年、震災で父を亡くし、家も無くなり、友達も親戚も亡くして落ち込んでいる中、それでも私は頑張っていこうともがいていました。そんな私の姿を中山くんもそばで見ているので、「どこまでも元気な曲を作って欲しい」とお願いしたら、私がオーダーした以上の出来の楽曲が仕上がってきたので、心の底から「ありがとう」と言いました。

――「RiSE」は今回のアルバムの中で一番思いを込められたと思いますが、佐藤さん自身が作詞された詞の方についてもお聞かせください。

佐藤:昨年は震災があり、私自身とても落ち込みました。去年1年は記憶がないくらい、日々を生きることに精一杯で、元気に歌を歌うことに集中していても心の中ではいつも悲しくて泣いていました。
でもそれを乗り越えていかなくちゃいけなくて、自分を奮い立たせようという応援歌を作りたいなと思ったし、同じ気持ちでいる故郷大槌町のみんなにも頑張ってもらいたいなと思ったし、そのほかにも震災とか関係なく日々精一杯生きて頑張っている人全員に当てはまるような応援歌を作るんだという気持ちで「RiSE」を書きました。

◆大槌町での人々や佐藤さん自身の自然な笑顔が映っているPV。町は未だに復興してないが人々はたくましく生きている

――PVもかなり特徴的というか、実際に大槌町の映像や写真などを使ったものになっていますね。

佐藤:これは元々作ろうとしてたわけではないんです。今回のジャケットは大槌町で私と縁のある人たちと写真を撮り、その写真で“RiSE”という文字をコラージュしようと思っていて、その写真撮影のために大槌町に帰ったんです。
その時にランティスさんが資料のためにビデオを回していたのですが、大槌町の人たちの笑顔があまりにも素敵だったので、その映像でPVを作りました。ですので、本当に飾っていない自然な笑顔が撮れています。

――いつ撮影に行かれたのですか?

佐藤:今年の4月です。震災から1年ちょっと経ったくらいです。

――町は復興していましたか?

佐藤:いえ、まったく復興してないと言っていいと思います。もちろん仮設住宅は去年のうちに立ったし、役場とか小学校とか公共施設も仮設で立っているんですけど、それだけです。映像で見るように街中、何もないさら地になっています。
6月に大槌町で「おおつちありがとうロックフェスティバル」という音楽イベントがあって、私も出演する為に帰省したのですが、津波でさら地になってしまった町が一面花畑になっていて、亡くなった方が花になって咲いているような気がして、とても悲しくなって涙が止まりませんでした。

――そんな中、みなさんたくましく生きてらっしゃるんですね。

佐藤:はい。毎日ご飯を食べていかなきゃいけないし、子供たちを育てていかなきゃいけないし、お金を稼がなきゃいけないので、生きていくことは本当に強く、たくましいことだなと感じました。

◆この1年半で物質ではなく目に見えないものの大切さを強く感じた

――そんな震災から1年半くらい経ちましたけど、この1年半を通して佐藤さん自身が得たものや一番強く感じたものってなんでしょう?

佐藤:震災があってから私の価値観がガラリと変わりました。今までは自分が生きていくことだけを考えていたような気がして、もちろん仕事仲間や友人、家族、ファンの方々には感謝していたのだけれども、もっともっと強く自分をささえているものや、自分を形作っているものの大切さをすごく感じました。

大切なものは、家族の愛だったり、友人の支えだったり、ファンの声だったりと物質ではなく目に見えないものだったんです。津波が来て家が流され財産もなくなったりと、物質なんて全部無くなっちゃいましたが、そういう目に見えない絆みたいなものは無くならないと強く感じました。そして音楽もまた形のないものじゃないですか。だからこそ想いや気持ちといったものをより音楽で強く伝えていこうという気持ちになりました。そういう部分ですごく変わりましたね。
また、「がんばっぺし!大槌」というサイトも立ちあげて、やれることをやりました。

◆震災を機に見え方が変わった「ひょっこりひょうたん島」

――その大槌町つながりになりますが、このアルバムの中で「ひょっこりひょうたん島」と「吉里吉里地方の子守唄」は、両方とも地元にまつわる曲ですね。どのような経緯で歌うことになったのでしょう?
まずは「ひょっこりひょうたん島」の方からお願いします。

佐藤:大槌町に蓬莱(ほうらい)島という島があって、それが井上ひさしさん原作の「ひょっこりひょうたん島」のモデルになっています。ですので、大槌町の人たちはすごく蓬莱島を大切にしていて、大槌町のシンボルにしているんです。町のお昼を伝える鐘の音も「ひょっこりひょうたん島」なんです。
震災後は、「ジャズバージョン」であったり「みんなの合唱バージョン」であったりと色々なバージョンで昼と夜、毎日ずっと流されています。

私は「ひょっこりひょうたん島」って面白くて単に明るいアニソンだと思っていました。しかし、震災後にちゃんとこの曲の歌詞を見直してみたら、すごく力強いメッセージに溢れていて、非常に今の大槌町の人たちの気持ちに当てはまると言いますか、この歌を歌っていると、今は辛いけどそれを笑い飛ばして明るく生きていこうみたいに思えるんです。とても良い歌だなと思って歌うようになりました。
大槌町でイベントがある時はもちろん歌いますし、震災関係のイベントでも必ず歌うようにしています。

――実際にイベントなどで歌ってみていかがでしたか?

佐藤:すごく盛り上がるんですよ。おじいちゃんもおばあちゃんも子供もみんな知っているから、老若男女歌えるなんて素晴らしいなと思いました。

――今回、コーラスは「株式会社S」のメンバーが歌っていますがどうでしたか?

佐藤:楽しかったです。早乙女由香が元気すぎて後ろに下げたりとか、飛蘭は逆に「自分が歌うと夜の雰囲気になるから」とか言って全然声を張らないので前に押し出したりとか(笑)。そんな感じでワイワイしながら楽しくレコーディングしました。
みんな、自分たちのコーラスを入れることによって元気な曲になるんだったらということで協力してくれました。

――この曲も大槌町で流れるといいですね。

佐藤:さっそく町長に送りました(笑)。

◆「吉里吉里地方の子守唄」を伝承活動されていた雑貨屋のおじさんの遺志を継ぐ

――そして「吉里吉里地方の子守唄~ミルキーのおっちゃんに捧ぐ~」は、音源がなくて大変だったということをお聞きしました。

佐藤:これって大槌町に吉里吉里(きりきり)という場所があり、その地区に伝わる子守唄でして、決まった歌があるわけではないんです。その家々のおばあちゃんが節回しは同じ感じで適当に歌いやすく歌って歌詞もそれぞれ考えて歌ってらっしゃるんです。

昔から伝わっている子守唄なのですが、伝承活動をされていた男性がいたんです。「雑貨屋ミルキー」というお店の店長で山崎さんという方がお店の経営のかたわら、ギター一本で弾き語りで小学校を回って伝承活動されていました。私も小学校の頃、その歌を聴きましたし、ミルキーにはかわいいグッズがいっぱい売っていましたからいつも遊びに行っていて、とても仲の良いおじちゃんだったんですが、今回の震災で行方不明のままでした。

そんな時に、その方をずっと取材していらっしゃったNHKの方から連絡がありまして、この歌を歌い継いでいくことが行方不明になった山崎さんに向けての弔いだと思い、ネットで調べているうちに私にたどり着き、是非大槌町出身の私に歌い継いでいって欲しいというお話をいただきまして。それからNHKの取材された映像を見ながらElements Gardenの藤間くんと一緒に譜面を起こし、CDに入れさせていただきました。今回はギター弾き語りで一発録りで収録しました。

――「ひょっこりひょうたん島」も藤間さんが編曲されてます。藤間さんはどのようにこの曲たちを捉えていたのでしょうか?

佐藤:震災前と後の蓬莱島の写真を2つ並べてアレンジ作業をされたようで、こんなに曲に向かい合って、どうすればみんなが喜んでくれるだろうと考えて作ったことは長い作家生活の中でないと言っていました。彼へのオーダーは、全員知っている曲なので「ひょっこりひょうたん島」のスタンダードな部分は絶対に消さないで、だけど今の人がアレンジしたということがわかるような新しいアレンジにして欲しいとお願いしたんです。

だからすごく聴く人側のことを考えて作ったと思うんですが、ブラスのスタンダードなラインはそのままあり、そのスウィングするジャジーな部分もちゃんと残していて、だけど子供が聴いても楽しくなるような水の音だったりが入っていたりと、すごく素敵なアレンジに仕上げてくれて素晴らしかったです。改めてこんな天才たちと一緒に仕事しているなんて嬉しいなと思いました。

◆この2年間で披露してきたPCゲーム楽曲も多数収録

――この3曲以外にも今回のアルバムにはPCゲームの曲がたくさん入っています。こちらのPCゲーム曲に対する思いというのはいかがですか?

佐藤:ベストアルバムを出したのが2010年です。ですので2010年から2012年までの2年間のPCゲームの楽曲をここに収録しています。2年間、ありがたいことにたくさんのメーカーさんにお仕事いただき、こんなに多くのPCゲーム曲を歌ってきたんだなと改めて思いました。それぞれのゲームの世界観を、たった5分間で全て表しているような非常にメッセージ性の高い曲が11曲入っています。

PCゲームって基本は18禁のゲームなのでタブーがない分、物語も深かったりするので、楽曲自体の世界観も深いし、ジャンルも多岐に渡っているんですよね。だから「RiSE」のようなオリジナルのメッセージソングに全然負けないくらい、それぞれインパクトが強いです。PCゲームの曲でデビューし、12年経ってもこうやってたくさんの曲を歌わせていただき、昨年などは震災があったのにも関わらず、それでもお仕事をいただいてきましたので、私の2年間を形作っている全14曲なんです。
だから今の佐藤ひろ美が凝縮されているアルバムになっていると思います。14曲全部好きです。

――PCゲームの音楽でみなさんと共感するのも一つの繋がりですよね。

佐藤:はい、本当に繋がりだと思います。やっぱりみんな繋がりたいんですよね。パソコンが普及し、ニコニコ動画などが出てきて音楽を楽しむ場もすごく変わってきました。たくさんの人と共有して楽しみたいなという気持ちが芽生えるわけです。
だから最近ではPCゲーム関連のライブもさかんに行われていて、たくさんの人が集まると思います。これからもっとライブのような場が増えていけばいいなと思っています。

――佐藤さんはイベントなどに直接行って想いを届けているという印象が強いです。

佐藤:歌って心なんですよね。形ない心や想いをどうにか形にしたくて溢れでたものが音楽だったり絵だったりするので、その想いをやはり面と向かって届けたいんです。なのでライブが大好きですし、今後もライブをやっていきたいです。

――最後に改めてアルバムを待っているファンの方へメッセージをいただけますか。

佐藤:2010年にベストアルバムを出し、これから第2章の私が始まると思っていました。自分でもどんな第2章が始まるのかなと思っていたら色々なことが起こり、たどり着いたものがここでした。たくさんの人たちの笑顔の元になれるような、強くてたくましく優しくて柔らかい、そんな歌を歌っていけたらいいなと思っています。
第2章の佐藤ひろ美も一生懸命邁進していきますので、応援していただけたら嬉しいです。
今回のアルバム『RiSE』はランティスさんにご協力をいただいて、売り上げの一部を大槌町に寄付いたします。是非お手にとって聴いていただけたらなと思います。よろしくお願いします。

<Text/ねりな>

【CD概要】

『RiSE』
2012年8月22日(水)

品番:LACA-15207
税込¥3,000

【収録曲】
01.RiSE / 02.Melty Air / 03.迷いの森 / 04.Dancing in the Moment / 05.夏のファンタジア / 06.Believe in You / 07.夏果(なつはて) / 08.望郷歌~まほろば~ / 09.「カケラ」 / 10.Storong enough / 11.祝祭のカンパネラ! / 12.Blieve Forever / 13.ひょっこりひょうたん島 / 14.吉里吉里地方の子守唄~ミルキ―のおっちゃんに捧ぐ~

【イベント情報】
歌の“メッセージ”をあなたに― 佐藤ひろ美ニューアルバム「RiSE」発売記念イベント開催!

<参加方法>
対象商品を参加券配布店舗にてご予約(全額内金)、または、ご購入いただいた方に先着で参加券をお渡しいたします。
※参加券はなくなり次第、終了となります。あらかじめご了承ください。

開催日:9月2日(日)
開催場所:【東京】AKIHABARAゲーマーズ本店
開場時間:13時00分
開演時間:13時30分~

内容:ミニライブ&“メッセージ”お渡し会(仮)
参加券配布店舗:AKIHABARAゲーマーズ本店、ゲーマーズ池袋店、ゲーマーズ新宿店、ゲーマーズ津田沼店

※参加券の詳細については各店舗様へご確認下さい。

●佐藤ひろ美公式サイト:
http://www.hiromi-net.com/

【プレゼント】
佐藤ひろ美さんのサイン入り色紙を1名の方にプレゼント!
ご希望の方は、「佐藤ひろ美」(他のプレゼントも同様の募集方法をしているため、ご希望プレゼントを判別させていただきます)の後に1. お名前、2. 郵便番号・ご住所、3. お電話番号、4. 性別、5. 年齢、6. サイトを知った切っかけを『れポたま!』公式ツイッター@repotama(https://twitter.com/repotama/)をフォローしていただいた上でDM(ダイレクトメール。お互いにフォローしている場合に使用可能な機能)にてお送りください。
フォローしていただき次第、お早めにフォロー返しをさせていただきます。
(※一つのアカウントで複数のプレゼントに応募可能です)

応募締め切り:2012年9月30日(日)23:59必着
(※記入事項には個人情報が含まれますので、送信される際はくれぐれもご注意ください。)