メジャーデビューミニアルバム『慟哭(どうこく)』が、キングレコードから5月23日(水)に発売された宇宙人のレコ発ライブ「西向く侍」が、5月31日(木)に東京・赤坂BLITZで行われた。
不思議な世界観を持ち、多くの謎に包まれているバンド、宇宙人がゲストに、映画「モテキ」に出演し話題を呼んだロックンロールを掻き鳴らす3ピースバンドN’夙川BOYS、コンセプトに「King of 学芸会」を掲げ、ももいろクローバーZの妹分的存在である私立恵比寿中学を迎え、異色のスリーマンライブが実現した。
トップバッターは私立恵比寿中学。オープニングSEが流れると、オーディエンスからは声援が送られ、サイリウムがフロアを彩った。1曲目の「売れたいエモーション!」が始まると同時に銀テープが発射され偽札が舞い、ステージがライブハウスから学園祭へと変わった。続く「ザ・ティッシュ~とまらない青春~」もオーディエンスの勢いは止まらない。
「皆さん、こんにちは~!朝のチャイムが鳴りました。私たち私立恵比寿中学です!よろしくお願いしま~す」と深々とお辞儀をし、それぞれが自己紹介。安本彩花が「今日はちょっと、ユニークな3つのグループの共演、存分にお楽しみください」とたどたどしく言うと会場からは笑いが起き、エビ中らしさで空気を和ませ、5月5日に発売されたメジャーデビューシングル「仮契約のシンデレラ」を披露。4曲目の「どしゃぶりリグレット」では、先ほどまで笑顔で飛び跳ねていた彼女たちとは違い、クールでキレのあるダンスを披露しフロアを魅了した。続くアッパーな曲「揚げろ!エビフライ」ではタオルを回し、ラストの「放課後下駄箱ロッケンロールMX」はフロアがXジャンプをし、バスドラが効いたメタル調の激しい曲で会場を揺らした。
2組目はN’夙川BOYS。メンバーがステージに登場すると歓声が湧きあがる。「楽しんでいけるかい?」とマーヤLOVEの言葉に、オーディエンスの声が大きくなり始まった「プラネットマジック」。キュートな歌声のリンダdadaとハスキーで破壊力のあるシャウト連発のマーヤLOVEの歌声は、型破りの掛け合いボーカルで、ストレートにぶつかってくる。「ロックンロールってのはね、飛び込むんだよ!もっと前においでよ!」というマーヤLOVEに煽られたフロアは、ぎゅうぎゅうになり盛り上がった。
突如、映画「スター・ウォーズ」のテーマが流れ会場がざわつく。観客参加型企画「スター・LOVE・ウォーズ」がスタートした。そして始まったのは、なんと綱引き大会。観客が2手に分かれて競い、負けたチームは勝ったチームのために物販で缶コーヒーを100円で買い、進呈するというもの。オーエス!オーエス!の掛け声と同時に、それぞれ9人の観客を見方につけたN’夙川BOYSのリンダdadaチームVS宇宙人のドラマーわだまことチームの綱引きが始まった。会場が一丸となった熱戦の結果、リンダdadaチームが勝利を収めた。
その後の「物語はちと?不安定」で観客の盛り上がりは最高潮に。シンノスケboysはギターを掻き鳴らしながら客にダイブしたり、2階に登ろうとしたりとフロアがもみくちゃになるほど暴れまわっていた。マーヤLOVEは「ステージで笑顔を絶やさなかったあの子たちが、袖にはけた途端ぶっ倒れていました。それが、全力で演奏してぶっ倒れるロックンローラーと何が違うんだ!と思いました。ジャンルとか気にせず、ぶっ飛ばしていってほしいです!」とエビ中ファンに思いを伝えた。また「フレフレ!宇宙人!」とマーヤLOVEが宇宙人に声援を送り、ラストの「死神DANCE」はまさに底から這い上がったかのようなプレイで、彼らの全身から伝わる音が会場に弾丸のごとくぶつかってきた。アバンギャルドなビジュアルの彼らが魅せる、キュートでポップなロックンロールのステージは幕を閉じた。
そして最後は、この日の主役である宇宙人。ボーカルのしのさきあきこを除く3人が登場し、ミニアルバム「慟哭」に収録されているインスト曲「時計」からスタート。わずかな照明の中、ジャッジーな演奏を披露。しばらくしてしのさきが現れたが、彼女は何かポーズを決めたままマイクの前に立ったままで、その光景を見つめる観客もほぼ直立不動。先ほどの2組の時には感じなかった涼しさと静けさが会場を包み込んだ。
続く「ファンタスチックヨーグルト」や「コロネのおいしいぎょうざやさん」など、甘い彼女の歌声と、演奏、固有名詞が散りばめられた歌詞は、観客に拍手の機会も与えない。ミステリアスなイントロから始まる「もっともっとインザルーム」は照明の演出も活かされ、会場全体に動きは見えないものの、聞いている側を突き動かす音が、異空間に観客を引きずり込んでいった。最後の曲の「家の中以外away」で歌い終わると観客にお辞儀をし、ステージから去って行くしのさき。そこで初めて拍手が送られた。MCは一切なく、淡々と演奏しステージを退場していった宇宙人は、独特な世界観を貫き通し、ライブを終えた。
<Text/島袋圭月>
●宇宙人 オフィシャルサイト
http://uchu-jin.com/