松本零士『オズマ』松本零士先生のインタビューが到着!!

By, 2012年4月3日




日本マンガ界の巨匠・松本零士氏が1980年代に執筆し、未公開のまま眠っていたシナリオ『オズマ』。
砂漠化した未来の地球を舞台に、謎の超巨大移動物体「オズマ」を巡る重厚な人間ドラマと、謎が謎を呼ぶ緊迫のストーリー、そしてハイクオリティなSFアクションが交錯する、松本零士が21世紀に“生命の在り方”を問う空前の時空ロマンス。
物語はいよいよ中盤を放送。さらに、5月2日(水)には、WOWOWプライムにて全話一挙放送も決定いたしました。そこで、「オズマ」原作者、松本零士先生に、本作の企画や作品に関するお話を伺いました。

――今回放送される『オズマ』の企画は80年代後半にスタートしていたそうですね。

松本零士先生(以下、松本):台本の原型となるプロットは書き終えた頃、とある
事情で企画自体が頓挫してしまいました。タイトルはそれ以前に描いていた
『電光オズマ』という作品から流用してはいますが、内容はまったくの別の
物語として作っています。

――今回『オズマ』は全6話のテレビシリーズとして放送されますが、
当時はどのくらいのボリュームの作品として考えられたのでしょうか?

松本:じつは、90分くらいの劇場映画として考えていました。ですから、
今回放送される全6話を最終的に1本の映画に……というのが私の夢です。

――全6話(約25分×6話=150分)に切り分けられる内容というと、随分濃厚だったんですね。また、20数年経っても映像化に値する内容というのも凄いと思います。

松本:最初のプロットを書いた後、技術的な問題や、観測事実、研究成果などが色々発表されていますが、少なくとも当時の『オズマ』で考えていたことが今に遅れを取った表現ではなかったことが幸いしました。また、作品を作る時はいつも、時代感、科学感的にも古びないようにといのは念頭にあります。と同時に、読み継がれ、観続けられるものにならないと駄目だという思いがあります。どの時代にも通用できるような。時代が変わっても、読者にとって新鮮な作品として生きて行けるようにという意味です。

――松本作品の印象として、少年の成長・冒険・ヒロインとの出会いの他、社会へのチャレンジという部分があります。

松本:そうですね。これから社会へ出て行く、旅立ちの第一歩を踏み出す少年を描く場合が多いです。それは人生にとって一番楽しい瞬間なんです。自分自身の経験を今思い出しても楽しくなります。きっと今の子供たちにとっても同じだと思います。飛び出した後は色々辛い思いもしますが、それは已むを得ないことで、その直前、飛び出すまでが楽しいんです。この想いは『オズマ』でも主人公を通して表現したいと思っています。

――そんな少年たちの周りにいる大人たちが、社会の壁やハードルになりつつ、子供たちを温かく見守っているのも松本作品の特長だと思います。

松本:私の作品はすべて自分自身で見聞きした経験を生かして描いていますが、そういった思いは確かにあります。『オズマ』では、大人たちが作る2つの勢力による争いが描かれますが、それは社会に飛び出る若者にとってのハードルの象徴であり、「いずれそういう場面に出会う」という、越えるべき壁になります。

――さて、今作ではオズマという謎のキャラクターがキーになりますが、オズマはどんな存在として表現されるのでしょうか?

松本:生命の起源と運命、全てを左右する時間の流れを表現しています。人間では如何ともし難い、宇宙のあらゆるものの生命の営みの掟の上で、生命体としていかに生きるべきかを表現する存在として描きました。でも最終話までその謎は明かしませんよ・・・。

――それもまた、多くの松本作品と共通した部分になりますね。

松本:自分自身がやっていることは、今も昔も変わっていません。また、80年代の子供たちも、今の子供たちも変わりありません。ですから、私から読者へ伝えるべきメッセージ、描きたい「自分の思い」はいつも同じです。漫画家は歳を取らない。頭の中は15歳の時から何も変わっていません。ただ、それを描くチャンスがあるかどうか。作品の形が変わるのはその時々に得られたチャンスの状況に合わせている感じです。ですから『オズマ』の制作スタッフのみなさんには、そこを上手く合致させ表現して欲しいと思います。

――先ほど『オズマ』のOP曲に決まったFTISLAND「Neverland」のPVをご覧になっていただきましたが、松本作品に登場するセリフのような歌詞が並んでいました。

松本:世代を越えたアーティストが私の想いを表現してくれたことはとても嬉しいですね。海外のアーティストとコラボレーションするのは2000年のDaft Punk(※注)以来になります。国境を越えた作品創りはいつもとても楽しいですね。

――FTISLANDのメンバーも松本作品の大ファンとお聞きしました。

松本:漫画やアニメーションに国境はありません。世界に共通して届けられる、これほど穏やかなメディアは他にはありません。

――他の国々へ……というのが作り手としていつも意識しているのでしょうか?

松本:もちろん、作品が世界に出て行く可能性は意識しています。ですから、服装ひとつとっても注意して作っています。どこの国の人が見ても嫌な思いをすることがないように。その視点が抜けると世界で読んでもらう作品にはなかなか成り得ません。それは映画を作る時でも同じです。どの国の人たちが観ても嫌な思いをしない、この事はいつも念頭においています。

――それは今だけでなく、漫画を書き始めた頃から?

松本:そうです。私の漫画には戦場を舞台にした作品が幾つもあります。当然、敵対した者同士を描くことになりますが、そこに個人的憎しみはなにもありません。出会う場所さえ違ったら親友にも慣れた者同士が戦わなければならない。お互いに死ねば悲しむ親兄弟子供がいる。他に国境、文化、いろんな違いや差はあっても、人間という立場では同じなんです。その前提で全てを描いています。どこの国の人が観ても嫌な思いをして貰いたくない。これは、これだけは漫画を描き始めた頃から一番気にしていたことです。

――『オズマ』の放送がスタートします。

松本:最終的な判断はラッシュを観せていただいてからになりますが、楽しみにしています。視聴者のみなさんも楽しみにしていてください。よろしくお願いします。

注)Daft Punk:ダフト・パンク。フランスのハウスミュージックグループ。2000年にリリースしたシングル『One More Time』では、予てから大ファンであったという松本零士氏がビデオクリップを手掛けている。

●作品特設サイト
http://ozuma.jp/

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