東京の天王洲・銀河劇場にて2011年12月13・14・16・17・18日の5日間、『坂本真綾 LIVE 2011“in the silence”』が行われた。
このライヴはコンセプトアルバム『Driving in the silence』の発売を機に、これまでにリリースされた3枚のコンセプトアルバムを発売順&収録曲順に披露するというスペシャルな内容。
最終日となった18日は、開演時間ほぼぴったりにスクリーンに1枚目のコンセプトアルバムのタイトル『easy listening』の文字が表示された。やがて鳥かごが大きく映し出され、その薄い幕の向こうに坂本真綾とバンドのメンバーが登場。1曲目の「inori」が始まり、囁きのような声とストリングスやパーカッションが繊細に重なるサウンドが広がっていった。
打ち込みのビートやデジタルな感触も新鮮だったこの作品を生の立体的な音像で丸ごと体感できる貴重な時間が流れ、「この作品があったからこそ自由になれたし世界が広がった。そんな『easy listening』の最後に収録されていた曲を聴いてください」と「birds」をエモーショナルに歌い終えてステージを去ると、スクリーンから鳥が飛び立ち、一面の星空の中に、2枚目のミニアルバム『30 minutes night flight』の文字が。その鳥はやがて飛行機となって、この作品のコンセプトである「30分の夜間飛行」の始まりを告げた。
このように、まるで短編映画のオムニバスを観ているような面白さでライヴは進んでいく。そして、2007年に発売された当時のCDジャケットの衣装を思わせるタータンチェック柄のドレスで再び登場すると、「セツナ」や「ユニバース」などをMCなしのジャスト30分で披露。スクリーンの飛行機が今度は車に変わったら、『Driving in the silence』がスタート。坂本は白いチュールのロングスカートに真っ赤なポンチョ型の衣装で、この作品のコンセプトである「冬」を素敵に演出した。「今年も色んなことがあったけど来年も楽しんで行こうよ、という気持ちで初めてクリスマス・ソングを作りました」と歌われた「homemade christmas」がホームパーティのような雰囲気で届けられ、客席にも温かな笑顔が溢れた。
コンセプトアルバム3枚を丸ごと演奏するという大胆なライヴ、しかもひとつの会場にて全曲同じ内容(アンコール1曲のみ日替わり)で5日間も行うというのは、チャレンジ精神旺盛な坂本真綾ならでは。最終日のラストは彼女のライヴでお馴染みのナンバー「ポケットを空にして」で、観客の大合唱と共に締めくくった。年代もコンセプトも異なる3つの作品が、ひとつの物語となって一度に楽しめた、特別な夜。観客にとっても忘れられないクリスマス・プレゼントになったことだろう。
<Text:上野三樹>
●坂本真綾 オフィシャルサイト
http://www.jvcmusic.co.jp/maaya/