「自分が観客席にいるような没入感を味わってほしい」 『オーディエンス』を上演する劇団フルタ丸主宰・フルタジュン インタビュー

By saeki, 2020年6月6日


今年で結成18年目を迎え、国内だけでなく海外にも活躍の場を広げようとしている「劇団フルタ丸」が6月14日(日)、初の無観客ライブ配信公演を行なうことが決定した。

世の中の情勢をかんがみ、新たな試みで作品を作り上げることになった「劇団フルタ丸」主宰者のフルタジュン。企画が決まってから公演日まで3週間という短時間で、彼はいかにして作品を作り上げ、カメラの向こうの観客に何を伝えようと思ったのか? 本人にたっぷりと語っていただいた。

―フルタさんのなかで、演劇界において“異変”を感じた瞬間は?

フルタジュンさん(以下、フルタ):今年2月上旬に横浜で『梟の服』という公演をやらせていただいたのですが、中国から来ていただくはずだったお客さん達が来られなくなったんです。
コロナのニュースはすでに日本でも報道されていたのですが「もうここまで影響が出ているんだな」と感じたのは、そのときですね。
そのあともいくつか公演を予定していた作品があったのですが、中止や延期がどんどん決まっていきました。

―中止や延期にするかの判断は、どのように決められたのでしょう?

フルタ:2月~3月の公演に関しては、主催者側の判断でどうするか決めることが多かったのですが、4月頭に発表された「緊急事態宣言」後は、劇場での公演そのものが難しくなり……という感じですね。

―『オーディエンス』を企画するまでの経緯を教えて下さい。

フルタ:5月24日に本多劇場の現・総支配人である本多愼一郎さんから、メールでお話をいただきました。

その時点で、本多劇場で開催が決まった『DISTANCE』という一人芝居のライブ配信公演のことは知っていたのですが、本多グループの他の劇場をどのような形で再開させていくのかはまだ知りませんでした。

いただいたメールは「何かやりませんか?」というシンプルな内容でした。
フルタ丸としても、本多グループの劇場にはこれまで何度もお世話になっていたので、お声がけいただいてうれしかったです。

―今回のオファーに際し、フルタさんからなにかリクエストはありましたか?

フルタ:「どこの劇場が空いていますか?」という質問をさせていただきました。そしたら、いままでで一番関わりの深かった「劇」小劇場を使わせて頂けそうだったので「是非そこでやらせてもらえたらうれしいです」とお伝えしました。そのときに、企画の内容も提示させていただいたんです。

実は今回、本多グループの劇場でどれだけ公演を重ねてきたのかを振り返ってみたら、どの劇場でもたくさんお世話になっているのですが、特に「劇」小劇場では一番多く公演をさせていただいていることが分かりました。「これはぜひ力になりたい」と運命的なものを感じています。

―『オーディエンス』の物語の構想は「コロナ」以前からあったのでしょうか?

フルタ:いえ、まったくなかったですね。いまはキャストとオーディエンスの間にも「ディスタンス」があります。今回、本多劇場さんで「ディスタンス」の企画が始まり、「その先に考えるべき演劇はなにか」と考えていったら、それは観客にスポットを当てた物語なんじゃないかと思いました。

―劇団員にはどのタイミングで伝えられたのでしょうか?

フルタ:本多愼一郎さんから連絡を頂いた5月24日の当日、その夜には劇団員を集めてオンラインで打ち合わせをしました。

―劇団員の反応は?

フルタ:準備期間が短いこともありましたし、フルタ丸でライブ配信での劇をやったことがないので不安だったと思います。しかも、ステージ上ではなく「実際の観客席」を舞台に演技をするというのも初めてなので、何がどうなるのかよく分からない感じだったんじゃないですか。でも、そこから話してイメージを共有して「やろう」ということになりました。

―短期間で台本を書き上げるのは難しかったですか?

フルタ:「ここを伝えなくてはいけない」というのが自分の中で決まっていたので、書けると思いました。伝え方は色々あるかと思いますが「何を伝えるか」「何を表現したいか」がしっかり見えていれば、時間がなくても不安にはならないです。

―上演時間を設定する決め手となったものは?

フルタ:ライブ配信で物語を伝える場合、人間の集中力がどのくらい持続するのか、というのも考えました。例えば、テレビのドラマだとCMを抜いて40分くらいですよね。ドラマとは違いますが、まずはそのぐらいの尺感で面白いものを作ることができるのか考えました。でも、そのぐらいの尺感がとても合っているような気がします。

―作品の見どころを、さわりでいいので教えていただけますか?

フルタ:今回は、劇場の観客席を舞台にした観客の物語です。
なぜかなかなか開演しない舞台を待ち続ける、演劇を待っている観客たちの群像劇を描きます。自分が観客席にいるような“没入感”を味わっていただければうれしいですね。

―演劇だけに限らず、今後に向けてのビジョンがあれば教えて下さい。

フルタ:まずは、演劇に携わっている人間として、自分が協力できることはできる限りやっていきたいです。

これまでもそうでしたが、まずは挑戦して、反省することがあれば反省して、また挑戦する……というのはこれからも変わらないでしょうし、今回のことがあって、逆にその想いを強くしました。萎縮することなく、面白いかもしれないと感じたことには挑戦したい。やったことがないことをやりたいですね。

『オーディエンス』は短期間で作る作品ですが、逆にこの短期間だからこそ意味がある、輝く作品かもしれない。世の中の情勢と鏡合わせのようなこの作品を、今、劇場で上演できることにやりがいも楽しみもあります。ぜひ、ライブ配信でご覧ください。

<Text/ダンディ佐伯>

【公演概要】
本多劇場グループ PRESENTS 『オーディエンス』
■公演日時:2020年6月14日(日)16時開演(*上演時間は40分程度を予定)

■会場:下北沢「劇」小劇場

■チケット料金:2,020円

■プレイガイド:イープラス *6月6日(土)10時より発売開始
https://eplus.jp/sf/detail/3288340001?P6=001&P1=0402&P59=1
■視聴方法:【Streaming+】
https://eplus.jp/sf/guide/streamingplus-userguide

☆終演後、「アーカイブ観劇チケット」の販売も予定しております。

【作・演出】 フルタジュン  
【出演】 劇団フルタ丸
【STAFF】音響:水野 裕(空間企画)
撮影・配信:株式会社ナチュラルパラドックス
企画・製作:劇団フルタ丸

【主催】本多劇場グループ

<STORY>
6月14日、日曜日、下北沢。
劇団ナップサックの本公演『魔法』を観るために、
五人の観客が「劇」小劇場に詰め掛けていた。
「もう間もなく開演いたします」というアナウンス。
しかし、待てど待てど、演劇が始まらない。
いつまで待つのか。どうして待つのか。それでも待つのか。
待ち続ける観客達の群像劇。

<フルタジュンより>
6月1日より本多劇場グループの公演が無観客生配信で始まりました。
これからステップを踏みながら、劇場が演劇を取り戻そうとしています。
自分は演劇を創ることが好きですが、劇場で演劇を観ることも好きです。
演劇が始まる前の観客席の具合が好きなのかもしれません。
あの薄暗さ、あのチラシの束、あの場内アナウンス、あの妙な緊張感。
『オーディエンス』は実際の観客席で展開する観客達の物語です。
劇場での観劇に想いを馳せてもらえたら。

●公演 特設サイト
https://bit.ly/3dCA3RD

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