作品の舞台で物語の制作秘話が語られる! 「『色づく世界の明日から』トークショー ~キミノイクベキトコロ、長崎~」レポート

By saeki, 2019年12月6日


2018年10月~12月まで放送され、根強い人気を誇るオリジナルテレビアニメーション『色づく世界の明日から』のキャスト、スタッフが登壇したイベントが11月23日、作品の舞台である長崎・平和会館ホールで開催された。

当日は、NBC長崎放送の村山アナウンサーが司会のもと、月白瞳美役・石原夏織、月白琥珀役・本渡 楓、篠原俊哉監督、P.A.WORKSの山本輝プロデューサー、インフィニットの永谷敬之プロデューサーが登壇した。

会場は作品ファンで埋まり、地元・長崎からはもちろん、遠方から訪れたファンも多数。永谷プロデューサーは「たくさん来てくれてありがたいです」と感謝の気持ちを述べていた。

☆本記事には、作品に関するネタバレが多数含まれています。ご注意下さい!

最初は制作秘話について。作品の舞台に(主に)長崎市を選んだことについて、篠原俊哉監督は「長崎には坂が多いので、絵的な変化が欲しかったというニーズに合致しました。また魔法が出てくる作品にとって、歴史のある長崎は相性がよかったんです」と語り、「奥さんの実家があるからというのもあります。ようやく嫁さん孝行ができました」と付け加え、笑いを誘った。
永谷プロデューサーからは「元々夜景がきれいということもあり、実は北海道の函館も候補にあがっていたんです」と裏話も飛び出した。

山本プロデューサーが語ったのはロケハンでの思い出。「2回に分けて長崎を訪れたのですが、何しろ急な坂が多く、車では入っていけないような場所もあるので、地図アプリで表示される距離よりも数倍疲れました」と苦笑い。
瞳美の家の場所に関しても「宅配便を配達するために何度も往復する場所はちょっと……」などといった理由で変更された経緯もあるそうだ。

また、夜景がきれいで、世界的に有名な稲佐山よりも、少々マイナーな鍋冠山を主なスポットとして起用した点について、篠原監督は「有名な観光スポットは極力使いたくない」という理由もあったそう。ちなみに「稲佐山を訪れるカップルは別れる」という伝説があるそうなので、「結果的に鍋冠山でよかったのでは?」という声も(笑)。

ほかにも琥珀のお店『まほう屋』のモデルとなった、名物マダムのいる「森の魔女カフェ」には石原さんが『TVアニメ「色づく世界の明日から」特別番組 石原夏織が行く、色づく長崎の旅』のロケで訪れた際に「カップルが多くて幸せそう」と感じたエピソードや、「坂の多い長崎に住む人は、一生自転車に乗らない人もいるらしい」説についての検証(会場ファンの中には自転車に乗ったことのない人もちらほら)などでも大盛り上がりだった。

ここからは「ファンが選ぶ! 好きなシーンベスト5」コーナー。事前に募集した、ファンが選ぶ名シーンを紹介。


第5位は『第1話』で主人公のひとり、葵唯翔と瞳美が出会うシーン。石原さんは「絵と色がついたものを見たとき、自分の想像以上に素敵でしたので、このシーンを選んでくださってうれしいです!」と感激のコメント。

第4位は『第6話』で、唯翔と高校のOBである朝川砂波がギャラリーから一緒に出てきたころを目撃し、ふたりが付き合っていると勘違いして逃げようとするシーン。
本渡さんは「『唯翔君になら瞳美のことを任せられる』というおばあちゃん目線もありつつ、一瞬出てくる『ギャラリー楓』の文字が気になりました(笑)」と持ち前の(?)観察力を見せた。

ちなみに、作中に登場する「めがね橋」停留場は2018年8月までは「賑橋」で、制作時はその名前だったそうだが、山本プロデューサーいわく「リアリティを持たせるよりも、みなさんが聖地巡礼しやすいように、敢えて新しい名前にあわせました」。


さらに篠原監督から本渡さんに「琥珀はこの時点で、瞳美の唯翔に対する想いには気づいていたと思いますか?」という質問が。本渡さんは「琥珀は勘が鋭い子だな、と思っていたので、恐らくもう気づいていたと思います」と自身の見解を示していた。
永谷プロデューサーは「実は、瞳美のシーンなのか、琥珀のシーンなのか? で割れたんです。観る人により、どっちとも取れるようなシーンがたくさんあるところが、本作の魅力だと思います」と語った。

第3位は『第13話』で、60年後に戻った瞳美が、昔大好きで読んでいた絵本を、もう一度読むシーン。

山本プロデューサーいわく「元々は全部石原さん(瞳美)が読む予定だった」そうだが、結果的にそれぞれの人物をイメージした動物の声を、各声優陣が演じることになったとのこと。
篠原監督は「最終話では、Aパートで現代に生きる人物たちはみんな出番がなくなってしまい、Bパートで出てこないのは寂しいと思ったので、こうした構成になりました。私としてはベストチョイスだったと思います」と、胸を張った。
この場面は、本作屈指の「泣けるシーン」で、声優陣のなかにも、この台本を読んで胸が熱くなったり、泣いてしまった人たちがたくさんいたそうだ。
石原さんは「『号泣してます』というメッセージが届いて『おんなじだ』」と思ったそうで、本渡さんも「琥珀がずっとためこんできた想いを、戻ってきた瞳美とようやく共有できて本当によかったです」と感慨にふけていた。

第2位は同じく『第13話』で、60年後に帰ろうとする瞳美をトラブルが襲い、空間を彷徨っていたところを唯翔が抱きしめるシーン。
ここで流れているやなぎなぎさんの「color capsule」は、永谷プロデューサーによると「元々エンディングテーマで使用する予定だった」そう。どうしてもどこかで使いたいと思った山本プロデューサーがこのシーンで挿入歌として起用したとのこと。篠原監督も「世に出なかったかもしれない曲を、山本君が救済したんだよ」と話していた。

そしていよいよ第1位。『第11話』で唯翔に贈った紙ひこうきを瞳美が追いかけていき、その先にいた唯翔と出会うシーン。
職場で仕事をしていた山本プロデューサーによると、階段から駆け下りてきた篠原監督が「ここでエンディングテーマが流れるとすごいことになる」と息巻いていたのが印象的だったそう。石原さんもスタッフから「11話のエンディング、やばい」と聞かされていたとのことだ。

このシーンでは、瞳美と唯翔がお互いの家からスマホの光を送りあって会話をするシーンがあるのだが、「最終話を前に、あまりにもでき過ぎなシーンになったので、『光をモールス信号にしようか?』という案も出た」(永谷プロデューサー)とのこと(笑)。また、編集時には絵が入っていなかったそうだが永谷プロデューサーは「絵がなくてもずっと見ていられました。瞳美と唯翔が積み重ねてきたものが全部出た、印象的なシーンでした」と話していた。

ランキングを総括し、永谷プロデューサーは「琥珀が出てくる前と後ではテンポ感も変わりましたし、瞳美に与えた影響も大きかったので、琥珀の働きも見ておけば、来年のランキングも変わるかもしれませんね」と話し、早くも来年の開催を示唆(?)していた。

 

続いては「長崎弁で生アフレコ!」コーナー。「もし瞳美たちが長崎で生きていたとしたら?」という「if」をテーマにし、石原さんと本渡さんに、事前にセレクトされたふたつのシーンを長崎弁で披露してもらう、というもの。今回は長崎県観光連盟の協力もあり、実現した。

生アフレコを披露し終えると、会場のファンからは拍手喝采! プロデューサー陣も触発されたのか「全員が長崎弁バージョンの作品も作ってみたいですね」と意気込み、ふたたび大きな拍手が沸き起こった。村山アナウンサーからは「最近の若者が使っている長崎弁に近く、すごくいいですね」と太鼓判を押され、石原さんと本渡さんは照れながらも拍手に応えていた。

 

ここからは来場者からの質問コーナー。
Blu-ray BOXに同梱されているCDに収録されたキャラクターソング「ささやかな光」(瞳美)「最高の魔法」(琥珀)(どちらも、やなぎなぎさん作曲)のレコーディングエピソードについて聞かれた石原さんは「やなぎさんから『学校のメンバーと会う前の、ひとりぼっちの瞳美をイメージして書いた曲』と教えていただきました。しっとりとした切ないメロディで、『つぶやくような歌い方を意識してください』とレクチャーを受けまして。普段でしたら声を張って歌うのですが、今回はやなぎさんの歌声を手本にして、やさしく、ささやくように歌いました。やなぎさんの音楽の作り方にも触れられてよかったです!」

一方の本渡さんは「仮歌をやなぎさん自ら歌われていて『もうこれでいいじゃん!』と思いました(笑)。『優しい気持ちを込めて歌ってください』と言われたものの、切羽詰った気持ちや切なさ、覚悟を決めた強い感情、おばあちゃんとしての感情など、全ての要素を入れていくとゴチャゴチャになってしまうのではないか? でもそれが琥珀らしさなのでは? とかなり議論を重ねました。結果、その箇所その箇所でニュアンスを入れさせていただいたので、フルで聴いていただくと『ここはおばあちゃんの琥珀、ここは現代の琥珀だな』と、分かっていただけると思います!」と語った。

「琥珀が60年生きていて、瞳美が生まれるまでの期間や、生まれたときの感情は?」という質問に、篠原監督が「みなさんで色々考えてほしいですが、そこを作品化する可能性はあります」、永谷プロデューサーも「みなさんのなかでも時系列など、気になっていることはいくつかあると思いますし、プロデューサーとしてもそこの部分にもドラマを作れるチャンスはあると考えています」と中々に前向きなコメントも飛び出した。

 

続いてはプレゼントコーナー。イベント向けに制作されたポスターに石原さんと本渡さんのサインを入れて10名にプレゼントされた。
さらに60名にP.A.WORKSが作品完成の打ち上げ記念で制作したという「●●のまほう」と書かれた(効力はお察し下さい)「星砂」がプレゼントされた。

盛りだくさんだったイベントもいよいよ終わりの時間。最後はファンに向けてメッセージが贈られた。

石原さん「『色づく』の舞台で、ファンのみなさんとたくさんお話しすることができて楽しかったです。私は長崎に来るのが今回で2回目なのですが、また新たな魅力を知ることができました。長崎が第2の故郷と思えるように、作品を愛し続けていきたいです!」

本渡さん「みなさんの作品に対する感想も聞けましたし、裏話もたくさん聞くことができましたし、これからも何かお力添えができることがあれば、いち声優として頑張ります。これからも『色づく』をよろしくお願いします!」

篠原監督「放送から1年経ち、まさか作品の舞台でイベントができるとは思っていなかったのでうれしいです。これもファンのみなさんのおかげだと思っています。ありがとうございます」

山本プロデューサー「今後も本作に関して色々な施策を考えていき、これからも長く作品に携わっていきたいです」

永谷プロデューサー「今回うれしかったのはは長崎のほうからお声掛けいただいたことです。僕らの会社では『作品に対して10年は見よう』というポリシーでやっていますので、あと9年はここにいるメンバーも一緒にやっていこうと。(ここでキャスト陣から作品にちなんで『あと60年!』という声があがる)僕が生きている間に達成できるのか分からないですが(笑)、ファンの方と結んだ約束を果たせるように、明日から頑張ります!」

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イベント後、篠原監督と山本プロデューサーにお話を伺ったので紹介しよう。

―まずはイベントの感想をお願いします。

篠原監督:今日は本当に楽しいイベントでした。長崎弁での演技は、変わったニュアンスを味わえて非常によかったです。

―イベントではあまり触れる時間がありませんでしたが、「魔法写真美術部」の面々について、掘り下げて語っていただけますか?

山本プロデューサー:そうですね……特に深澤千草についてはあまり具体的に描くことができなかったのが心残りですね。『色づく』に出てくる人物たちは、瞳美に色々な感情を植えつけてあげる役割を果たしたかったんです。
山吹将には「失恋」、風野あさぎは「嫉妬」、川合胡桃は「存在」としての悩みだとか、それぞれに役割を持たせたかったですが、その部分に関して、千草はうまく描ききれなかったかな、と。

―最終回の瞳美を見送るシーンで、千草が彼女に声をかけたセリフにはグッときました。

篠原監督:彼はあのメンバーのなかで、もしかしたら一番大人なんじゃないかと思いますね。

―60年後の姿は、本編でどのくらい描きたかったですか?

山本プロデューサー:視聴者のみなさんが、彼らが齢を取った姿を見たいのか? というのもありますからね。

篠原監督:唯翔が生涯独身を貫いたのか、それとも……という部分に関しても、現状はみなさんのご想像にお任せする形でお願いします(笑)。

<Text・Photo/ダンディ佐伯>
☆ページ下部に写真一覧あり。

【アニメ概要】
『色づく世界の明日から』

<スタッフ>
原作:ヤシオ・ナツカ
監督:篠原俊哉
シリーズ構成:柿原優子
キャラクター原案:フライ
キャラクターデザイン・総作画監督:秋山有希
プロップデザイン:宮岡真弓、石本剛啓
美術監督:鈴木くるみ
美術監修:東潤一
美術設定:宮岡真弓
色彩設計:中野尚美
撮影監督:並木智、富田喜允
3D監督:桐谷太力
編集:高橋歩
音響監督:山田陽
音楽:出羽良彰
音楽プロデューサー:西村潤
音楽制作:NBCユニバーサル・エンターテインメント
プロデューサー:小倉充俊、山崎史紀、川村仁、辻充仁、前田俊博、青井宏之、柏木豊、田中翔太、和泉勇一、相田剛
アニメーションプロデューサー:山本輝
プロデュース:永谷敬之

アニメーション制作: P.A.WORKS
製作:「色づく世界の明日から」製作委員会

<キャスト>
月白瞳美:石原夏織
月白琥珀:本渡楓/島本須美(60年後)
葵 唯翔:千葉翔也
風野あさぎ:市ノ瀬加那
川合胡桃:東山奈央
山吹 将:前田誠二
深澤千草:村瀬歩
ほか

●作品公式サイト
http://www.iroduku.jp/
●作品公式ツイッター
@iroduku_anime